今年4月から本格始動したテレワーク制度は、グループウェア「Office 365」やリモートデスクトップソフトウェア「Splashtop」の導入により実現した。これらのツールの導入経緯について高橋氏は、「社員へのヒアリングを進めていくうちに、時間と場所に制約があるということに課題を抱えている状況が明らかになったので、まずはOffice 365の導入を検討しました。また、VDI(仮想デスクトップ基盤)を検討していく際、トライアルで利用したSplashtopの使い勝手が良かったため、導入を決めました」と説明する。

もともと同社は、テレワーク制度導入以前から、VPN環境を利用して社外から社内システムにアクセスできる環境を整えていた。しかし、高いセキュリティを担保しながら、どのような環境においても、実務レベルに耐えうる利便性とパフォーマンスの高さを実現することが課題となっていた。現在は、約660名の社員のうち470名ほどがSplashtopを利用し、場所やデバイスを問わずに業務が行えるようになっている。

Splashtop導入の際には他のVDIやDaaSも検討したというが、「当時、情報システム部は8名という少人数体制だったため、なるべくスモールスタートできるようなものが望ましかったのです。Splashtopは身の丈に合わせて育てていけるようなツールであると感じました」(高橋氏)と、導入におけるコストの低さや容易さを評価しているようだ。

スプラッシュトップ 代表取締役 水野良昭氏

Splashtopの提供元であるスプラッシュトップ 代表取締役 水野良昭氏は、「当時は実装していなかった機能も、セゾン情報システムズ様とのご相談のうえで採用していきました。セキュリティ面の強化も行いました」と説明している。客先のマシンでSplashtopを使うシーンを想定し、通常ではアプリをインストールする必要があるが、Google Chromeのアドオンで使えるようにするなど、セゾン情報システムズに向けたカスタマイズにも対応した。

実際にSplashtopを利用している社員からの評判も上々だ。Splashtopは導入されてちょうど1年ほどになるが、今年4月にテレワーク制度が始動したことにより本格的に広まった形となる。細切れに利用している人や、長時間使っている人など、人によってその使い方はさまざま。なるべく自主的に利用してほしいという運用側の意図があるため、利用方法に縛りは設けられていない。

「部署や会社からの指示だとやらされ感が出てしまいますが、Splashtopは口コミで広まっていったと感じています。会社の環境そのままで、場所やデバイスを選ばず仕事がしたいというニーズが強くあるということだと思います」(高橋氏)

働き方改革を進めるうえでの今後の課題について聞くと高橋氏は、マネジメント層の意識を変える必要があると指摘した。そのために現在では、勤怠時間やリモートで業務を行った時間などのデータを収集し、BIツールで可視化・管理する仕組みづくりを進めているという。部門ごとのリモートワークツールの利用率を可視化することで、実際に業務効率化へつながっていることを確認し、さらなる利用を促していきたい考えだ。

  • オフィス内には移動をスムーズに行うための内階段を設置

「今後は、あらゆる社内のデータを見える化していきたいですね。売り上げに貢献するという意味で、CRMやSFAの整備なども行っていきたいと考えています。やらなければならないことはまだまだたくさんあります」と、高橋氏は今後の展望について語っていた。古い体質の会社は、イノベーションが加速されるような革新的な会社に生まれ変われるのだろうか。セゾン情報システムズの改革は、まだ始まったばかりだ。