大阪大学(阪大)は、DCミューオンビームを用いたミューオンX線分析法により、有機物を含む炭素質コンドライト隕石「Jbilet Winselwan」のMg、Si、Fe、O、S、Cの非破壊定量分析に成功したと発表した。

同成果は、大阪大学大学院理学研究科宇宙地球科学専攻の寺田健太郎 教授、同物理学専攻の佐藤朗 助教、同化学専攻の二宮和彦 助教らの共同研究グループが、日本原子力研究開発機構の大澤崇人 主任研究員、および現 東京大学大学院理学系研究科(当時 - 北海道大学)の橘省吾 教授ほかと協力して実現したもの。詳細は英国の学術誌「ScientificReports」に掲載された。

今回分析を行った「Jbilet Winselwan」は、太陽系誕生時の記憶を残しており、生命材料ともなりえた地球外有機物を含む隕石だ。炭素質コンドライト隕石の中でもCMグループとの類似が指摘されてきたが、従来の電子ビーム分析では極表面付近の数μm程度の深さの、Na以上の元素しか定量できず、全岩の化学組成はよくわかっていなかった。

この研究では、DCミューオンビームを用いたミューオンX線分析法により、隕石全体の主要元素の存在度のパターンが炭素を含めCMグループ炭素質コンドライトとして分類できることが、地球化学的に判明したとしている。

また、現在、JAXAでは「はやぶさ2」、NASAではオシリス・レックスによるC型小惑星0らのサンプルリターン計画が進行中で、2020年に有機物を含んだ小惑星物質が地球に帰還すると期待されている。

「はやぶさ2」による小惑星サンプルリターンの想像図 (イラスト:池下章裕)(出所:京都大学Webサイト)

これらのミッションの目標は、対象小惑星の理解だけでなく、分子雲のような低温環境でつくられた単純な有機物が、小惑星内部における熱や水が関わるプロセスで、どのように組成や構造を変えながら複雑化したかを理解することだ。

そのためには、いかに地球物質(特に地球の有機物)で汚染されることなく、非破壊で回収サンプルの素性(化学組成、酸化還元状態、同位体)を明らかにし、いかに回収試料の最適部位を特定し分析機関に配分するかが、重要な課題となる。

同分析手法について、研究グループは、サンプルにダメージを与えることなく、非破壊で炭素や酸素を定量的に分析することが可能なほか、窒素の定量分析までできる可能性もあり、太陽系初期につくられた有機物の主成分の非破壊分析を可能とする大きなポテンシャルを秘めているとコメントしている。