東北大学は、直径10km程度の小惑星が地球へ衝突した場合でも、動物の種の大部分がいなくなる大量絶滅が常に起きるとは限らず、その確率は1割程度と低かっただろうという考察を発表した。

オレンジ色の部分に直径 9 km の小惑星が衝突した場合に大量絶滅が起 きたと推定される。実際は 6600 万年前に黒星印の地点(メキシコのユカタン半島) に小惑星が衝突した。論文にはより詳しい図が載っています。(c)海保邦夫(出所:東北大学プレスリリース)

同研究は、東北大学大学院理学研究科地学専攻の海保邦夫教授と気象庁気象研究所の大島長主任研究官の研究グループによるもので、同研究成果は、11月9日付けで英国科学誌「Scientific Reports」に掲載された。

一般に、大きな小惑星が地球へ衝突すると生物の多くが絶滅すると考えられている。実際に、6600万年前の白亜紀末に直径10km程度の小惑星が地球へ衝突し、恐竜など75%以上の動物の種が絶滅したことが知られている。地球に衝突した小惑星は、堆積岩中の有機物を熱し、それにより生成されたすすが成層圏中に放出され、地球全体を取り巻くことで、地上や海上に届く太陽光を遮り、地上気温と海水温の低下、低緯度での干ばつを引き起こし、恐竜やアンモナイトなどが絶滅したとする研究成果も、同研究グループにより2016年7月に発表されている。

その後、同研究グループは、すすの元である堆積岩中の有機物量が絶滅の決め手になると考え、当時の堆積岩中の有機物量の地球上の分布を調べた。その結果、有機物量は場所によって3桁も異なり、有機物量の少ない地域に小惑星が衝突した場合、放出されるすすの量も少なく気温低下も少ないという。また、気象研究所の気候モデルでの計算により成層圏中のすす量に応じた気候変動の調査を行った。その結果、白亜紀末の場合、大量絶滅を起こすのは地球表面の13%の範囲に小惑星が衝突した場合であると結論づけられた。これらの地域は海の縁辺域だった場所で、生物生産が盛んなために有機物が濃い堆積物が多く、地下には過去40億年間に堆積した、生物が残す有機物を大量に含む堆積岩がある。そのような場所に小惑星が衝突した場合は、衝突の熱により大量のすすが生成され、地球全体の月平均気温で最大8~11℃程度の低下が起きると推定された。また、有機物量が少ない68%の地域に衝突した場合は、0~4℃の気温低下が起きると推定された。前者は大量絶滅が起きるケースで、後者を含むそれ以外のケースでは、大量絶滅が起きず、生命史が変わっていた可能性があると考えられるという。

今後は、衝突によってどのくらいの規模の寒冷化事件がどのくらいの頻度で起きるのかが解明されることが期待される。また、大規模な現象を計算することで、気候モデルに関しても多くの知見が得られ、大規模火山噴火が起こった際の気候影響評価に活用できるという。これにより、過去に発生したことが示唆されている大規模火山噴火に伴う大量絶滅の際の気候変動についても明らかにできると期待されるということだ。