新日鐵住金と日鉄住金防蝕は、重要文化財である善光寺経蔵の耐震補強工事において、チタン箔シートが補強材の接合に採用されたことを発表した。同材の重要文化財への採用は初めての事例になるという。施工面積は28m2

善光寺経蔵(左)、善光寺本堂(右)

両社は、ライフサイクルコストの低減、社会インフラ長寿命化の観点から、素材の優れた特性を生かして構造物へのチタン適用拡大を推進している。今回の補強工事は、文化財建造物保存技術協会が元請として設計・施工を受注し、江尻建築構造設計事務所が構造設計を担当。天井および屋根の部材が地震で壊れないように、柱と柱の間に「筋交(ブレース)」を入れて建築物の耐震性を強化することを目的として実施された。今回は、「筋交」として炭素繊維ストランドロッドが採用されており、天井および屋根の部材との接合部には、当初貫通ボルトで固定する工法が候補となっていたが、チタン箔シート積層に代替する工法に設計変更された。

チタン拍の施工の様子

チタン箔シートは積層する数により強度設計が簡便であること、文化財では古材の保護を重要視しており、古材に対する接合後の不具合を極力少なくすることや結露しにくい材料が求められたこと、さらに、数百年単位の耐久性が必要であるため、より耐久性がある材料が求められたことにより、文化庁に採用が認められたという。また、今回の善光寺に続き、重要文化財の寺社など、歴史的建造物の耐震補強工事において、同様の検討が進んでいるとのことだ。

両社は今後も、チタン活用によるメリットを活かして構造物の耐震性向上、安全性向上およびライフサイクルコストの改善に貢献していくとしている。