島津製作所は、ガスクロマトグラフ(GC)およびガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)の前処理装置であるサーマルデソープションシステム「TD-30」シリーズ(TD-30、TD-30R)の販売を開始することを発表した。価格は「TD-30」が750万円、「TD-30R」が850万円(いずれも標準システム、税別)。

「TD-30」(左)、「TD-30R」(右)

「サーマルデソープションシステム」(Thermal Desorption System=加熱脱着システム)とは、揮発性成分を濃縮したチューブを加熱し、チューブから揮発性成分を高感度に分析機器に導入する前処理装置のこと。大気中の有害物質や建材・内装材に含まれるシックハウス原因物質の分析に用いられ、近年は自動車の内装材や電気機器材料の分析など、幅広い範囲の沸点の化合物を検出することが求められている。

このたび島津製作所が販売を開始する「TD-30」シリーズは、低沸点から高沸点までの成分に対応できる製品。同社が2005年に発売した「TD-20」の基本性能はそのままに、堅牢性や処理能力が大幅に向上している。流路やチューブの加熱機構に独自の工夫を施して、低沸点成分から高沸点成分まで広範囲な成分に対応できるようになった。

また、同シリーズは、最大60本のサンプルを搭載できる中級機「TD-30」と、120本を搭載でき、再捕集や内部標準物質の添加が可能な高級機「TD-30R」の2機種のラインナップが用意される。

高級機種「TD-30R」は120本のサンプルをセットできるため、夜間や週末の自動分析に適している。1つのサンプルを分析しているうちに次の試料の前処理を始める「オーバーラップ機能」が追加され、処理能力が飛躍的に高まっている。また、不活性でコールドポイントがないため、低残留・高回収を実現し、フタル酸エステル類や環状シロキサンなどの高沸点成分の分析に適している。

さらに「TD-30R」では、加熱後のチューブを高速で冷却することによって沸点が低い成分から高い成分まで再捕集が可能となった。一度しか対象成分を捕集できないことによる分析失敗のリスクが低下する。また、内部標準物質の自動添加機能により定量分析の精度も向上している。