京都大学(京大)は10月2日、透過力の強い硬X線で見つかった多数の活動銀河核を、世界中のX線望遠鏡や地上の可視光望遠鏡を用いて調査することで、巨大ブラックホールの質量、輻射光度、覆い隠しているガスの量を精度よく測定することに成功したと発表した。

ガスと塵に覆い隠された銀河中心巨大ブラックホールの想像図 (c)NASA

同成果は、京大、カトリカ大学、チューリヒ工科大学などの研究者からなる国際共同研究チームらによるもの。詳細は英国の学術誌「Nature」に掲載された。

銀河の中心に普遍的に存在する巨大ブラックホールの成長メカニズムとその環境の理解は、現代天文学の大きな課題の1つだ。巨大ブラックホールに周囲のガスが流れ込むと、銀河の中心部が明るく輝き、「活動銀河核」として観測される。これらの活動銀河核の大多数は、大量のガスや塵に覆われていることがわかっているが、その理由は長年来の謎だった。

今回の研究では、偏りのない多数の活動銀河核サンプルを作り、その「統計的性質」の調査を行った。具体的には、10keV以下のバンドに感度をもつX線望遠鏡を用いて、光度(ブラックホールからの輻射エネルギーの強さ)、ブラックホールを隠している視線方向にあるガスの量を調べた。また、可視光望遠鏡で「分光スペクトル」を調べることで、ブラックホールの質量を求めた。

その結果、ブラックホールをとりまくガスや塵はそのごく近傍に位置しており、その配置を決める主要因が、中心部から発する電磁波の輻射圧(光の力)であることが明らかになった。ブラックホールがあまりにも急速に物質を吸引する結果、放射される光の力が自身の重力よりも強くなってしまうと、覆っていたガスは吹き飛んでしまい、ブラックホールがそれらを吸い込んで「太り続ける」ことはできなくなる。

なお、研究チームは同成果について、巨大ブラックホールおよび、それと共に進化する銀河の成長メカニズムを理解する上で、鍵となる発見だとコメントしている。