ノベルクリスタルテクノロジーは、タムラ製作所、東京農工大学と共同開発した次世代パワーデバイス用のφ2インチ酸化ガリウムエピタキシャルウエハ(以下、Ga2O3エピウエハ)を量産することを発表した。これにより従来のエピウエハの面積を13倍までアップする。

φ2インチGa2O3エピタキシャルウエハ

Ga2O3は、SiCやGaNよりも大きなバンドギャップエネルギーを有することから、耐圧数万ボルトのパワーデバイスを実現することが理論的に可能であり、融液法によりバルク単結晶を育成できることから、将来的にSiCやGaNに比べ低価格で高品質な基板を市場に提供できる。このため、パワーデバイス市場において省エネルギー化への貢献が期待される半導体材料であるという。

ノベルクリスタルテクノロジーは2015年10月、10mm×15mmサイズのエピウエハを製造を開始したが、エピウエハの大口径化を求める声が強く、タムラ製作所および東京農工大学と協力しながらφ2インチGa2O3エピウエハの開発を進めてきた。

パワーデバイス用Ga2O3エピウエハは、数100μmの厚みからなる主面(001)面の単結晶Ga2O3基板と、数μ~数10μmの厚みからなるエピタキシャル膜で構成される。基板はEFG法によりタムラ製作所が新たに製造技術を開発し、エピ膜は東京農工大学のHVPE法の技術をベースに同社が大型装置を独自に開発し、φ2インチ基板全面への製膜が可能となった。これらの技術を組み合わせることで、エピ膜厚の均一性16.5%、キャリア密度の均一性19.7%のエピウエハの開発に成功した。

エピ膜厚分布(左)とキャリア密度分布(右)の等高線図

また、φ2インチエピウエハを用いてショットキーバリアダイオードを作製し、エピウエハ面内における電気特性を評価した。順方向特性については、エピ膜のキャリア密度と膜厚から推定される特性が得られ、逆方向についても測定装置の測定下限までリーク電流が抑えられている。面内でほぼ均一な特性が得られていることから、2インチウエハ全面にわたって高品質なエピ膜が形成されていることを確認できたという。

エピウエハのφ2インチ化により、実用化に向けた研究開発がさらに活発化し、Ga2O3パワーデバイスをはじめとした、様々な応用分野における早期の製品化が期待されるとしている。

今後は、Ga2O3パワーデバイス開発の更なる進展のため、Ga2O3エピウエハの低コスト化、大型化、高品質化に取組み、2018年度にはデバイス量産用φ4インチのエピウエハの製造を開始する。また、2019年度にはSiCエピウエハの価格を下回ることを実現し、将来的にはSiCエピウエハの1/3以下の価格でGa2O3エピウエハを提供する予定だ。

ショットキー電極付φ2インチGa2O3エピウエハ

なお、同技術の詳細は、9月13日よりイタリアのパルマ大学で開催される「International Workshop on Gallium Oxide and Related Materials」にて発表されるほか、英文誌「Japanese Journal of Applied Physics」のRapid Communicationとして掲載されるということだ。