トヨタ自動車(以下、トヨタ)は、車載通信機DCMの標準設定を柱とする「コネクティッド戦略」の一環として、クラウドと車載機を融合したハイブリッド方式のナビ機能「音声認識機能」を開発した。導入時期は2017年秋以降で、国内で発売される新型車のナビシステム(メーカーオプション)に順次展開される。

ハイブリッドナビ機能

通過時間のばらつき考慮 (ルートA)平均時間は長いが、ばらつきが小さい (ルートB)平均時間は短いが、ばらつきが大きい

同機能は、多くの車から収集した車両プローブ情報と、外部情報を組み合わせたデータベースを用いて、ルート探索、および施設検索処理をクラウドにて行い、車載機に配信するもの。速い応答性が要求される場合には、自動的に車載機での処理に切り替えて対応する。この機能により、「より早く到着するルートを探索することができる」、「より多くのルートの選択肢から選択できる」、「より自由度の高い目的地検索ができる」、「より簡単に、発話でマルチメディアシステムを操作できる」といったサービスが提供されるという。

クラウドによるルート探索では、各道路に対する通過時間のヒストグラム(確率分布)を蓄積した所要時間データベースに加え、より早く到着するルートとより正確な到着予想時刻を案内するために、所要時間の平均値とばらつきを考慮してルート探索を行う。また、区間が同一であっても、その進入方向や退出方向によって所要時間に差異が発生するため、区間当たりの所要時間に進入・退出を組み合わせた複数の時間データを考慮することで、ルートの所要時間をより正確に算出することができる。さらに、クラウドで処理を行うことによって、ユーザーが車両を購入した後もルート種別を増やすことができる「拡張ルート」機能を実現した。新しいルート種別はセンターからダウンロードすることで追加可能で、その第1弾として「関東ETC2.0料金割引優先ルート」が提供される予定となっている。

また、従来のクラウドによる音声認識機能は、自然な発話の認識ができるが、操作対象は目的地検索や天気などのサーバーアプリケーションのみが対象になっていた。一方、車載機による音声認識機能は、認識可能なフレーズに制約があったため、住所で目的地を登録するには、「目的地」→「住所」→「東京都文京区~」のように、数個のフレーズを覚えて使う必要があった。この2つの音声認識機能は別システムとなっており、使いたい機能に応じてシステムを使い分ける必要があったが、「ハイブリッド音声認識」機能では、クラウドによる音声認識の「自然な発話が認識できる」、「多量な施設名称の認識ができる」という利点、車載機による音声認識の「応答性が速い」という双方の利点を活かし、発話内容や状況に応じて、クラウドと車載機の機能を自動で使いわけることで、ユーザーは使いたい機能を意識することなく「駐車場のある蕎麦屋を探す」、「エアコンの風量を最大にする」等の自然な発話で各操作が可能になったということだ。