京都大学(京大)は8月25日、これまでに発見されたオートファジー機能分子である大隅Atg分子を必要としない新たなオートファジーの仕組みが存在することを見出したと発表した。

同成果は、京都大学大学院農学研究科 奥公秀助教、阪井康能教授らの研究グループによるもので、8月24日付の米国科学誌「Journal of Cell Biology」オンライン版に掲載された。

オートファジーは、液胞/リソソームで、細胞内のオルガネラや細胞質タンパク質を分解するシステム。2016年のノーベル生理学・医学賞を受賞した大隅良典栄誉教授により見出されたオートファジー様式は「マクロオートファジー」と呼ばれ、細胞内にオートファゴソームと呼ばれる膜構造体が出現し、分解対象となるオルガネラやタンパク質を包み込む。

一方、液胞が変形して直接標的を包み込むオートファジーの様式は、「ミクロオートファジー」と呼ばれ、マクロオートファジーとともに古くから知られている。近年、動物細胞では胚発生の過程に、植物ではアントシアニンという色素の合成にミクロオートファジーが働くことがわかってきたが、その分子機構については、すべてのあるいは一部のAtg分子が必要かどうかも含めて不明な点が多くあった。

今回、同研究グループは、パン酵母 Saccharomyces cerevisiaeを用いて、大隅Atg分子をまったく必要としないミクロオートファジーが存在すること、このミクロオートファジーにおける液胞膜の変形過程は、ESCRTと呼ばれる、Atgとは別の分子複合体が液胞膜上に移動することで進行し、マクロオートファジーとはまったく異なるメカニズムで起こることを明らかにした。

また、これまでマクロオートファジーで起こっていると考えられてきた、脂質滴という細胞内の中性脂質の貯蔵の場であるオルガネラの分解について、今回、少なくとも酵母ではAtg分子を必要としない脂肪滴分解があること、また液胞が直接脂肪滴を取り込む様子が電子顕微鏡で 観察されたことなどの結果から、ミクロオートファジーにより脂質滴の分解が起こっていることが証明された。

今回、ミクロオートファジーのみに関わる分子が明らかになったことから、同研究グループは、今後ミクロオートファジーにおける生体膜ダイナミクスを制御する分子メカニズムの解明が進展するものと説明している。

ミクロオートファジーにより液胞内に取り込まれる脂肪滴 (出所:京大Webサイト)