ケンブリッジ大学、米国立再生可能エネルギー研究所(NREL)、マサチューセッツ工科大学(MIT)などの研究チームは、ペロブスカイト太陽電池に含まれている鉛の成分を、人体に無害なビスマスに置き換えることが可能であることを実証したと発表した。研究論文は、材料科学専門誌「Advanced Materials」に掲載された。

ビスマス酸ヨウ化物(BiOI)薄膜で作製した光吸収体(出所:ケンブリッジ大学)

ペロブスカイト太陽電池は、近年の研究で性能が大幅に向上し、既存の結晶シリコン太陽電池に匹敵する変換効率が報告されるようになっている。また、製造コストの面でも結晶シリコン太陽電池より安価にできるため、次世代の太陽電池として期待されている。

ただし、ペロブスカイト材料は鉛成分を含んでいるため、健康面での安全性を懸念する意見があった。鉛成分を他の無害な材料に置き換えることができれば、ペロブスカイト太陽電池の実用化と普及へのはずみになると期待できる。

鉛を含むペロブスカイト太陽電池は、結晶シリコン太陽電池のような欠陥の少ない高純度材料を使わなくても、変換効率が悪くならないという特徴がある。製造プロセス中で多少の欠陥が生じても、太陽電池の性能にそれほど影響が出ないため、製造コストを低減できるのがペロブスカイト太陽電池の有利な点であるといえる。そこで、鉛系材料と同じような欠陥耐性を、より安全性の高い他の材料でも実現したいという発想になる。

周期表で鉛のとなりに位置するビスマスは、重金属だが無害であるため、いろいろな工業分野で鉛の代替材料に利用されている。したがって、鉛の代わりにビスマスをペロブスカイト太陽電池に適用する試みは、これまでにも当然あった。しかし、これまで報告されていたビスマス系材料には鉛系のような欠陥耐性がなく、太陽電池の性能が制限されるという問題があった。

今回の研究では、ビスマスと酸素とヨウ素の化合物であるビスマス酸ヨウ化物(BiOI)を用いて薄膜状の光吸収体を作製し、鉛代替材料としての性能検証を行った。

今回作製されたBiOI薄膜の特徴は、化学気相輸送法(CVT:chemical vapor transport)と呼ばれる方法で作製されている点である。2室に分離された炉の一方を360℃に予備加熱し、ここに薄膜を形成するための基板を置く。もう一方の室は350℃に予備加熱し、こちらにBiOI薄膜の原料となる三ヨウ化ビスマス(BiI3)の入ったるつぼを置いて、酸素とアルゴンの混合気体を流すことで基板上にBiOI薄膜が形成される。

研究チームによると、従来のビスマス系材料と異なり、CVT法で作製したBiOI薄膜にはハロゲン化鉛系のペロブスカイト同様の欠陥耐性があることが確認されたという。また、BiOIは材料安定性にも優れており、大気に197日間さらしつづけても、もともとの薄膜にみられる正方相の結晶構造が保たれていたという。大気中での劣化はハロゲン化鉛系ペロブスカイト太陽電池の課題になっているので、この点でも目立った進展があったといえる。

論文では、BiOIで作った光吸収体を2枚の電極で挟んで、その光電変換性能を調べたところ、最大で外部量子効率80%に達することを実証できたと報告されている。また、BiOIを用いた太陽電池の変換効率の理論限界値は22%程度になるという計算結果を得たとしている。