北見工業大学は、名古屋工業大学、東北大学サイバーサイエンスセンター、日本気象協会との研究グループが、訪日外国人が日本の夏の環境における熱中症リスクを試算することに成功したことを発表した。

熱帯、温帯、冷帯(暑熱順化後、順化前)から訪問した外国人の体表面温度の比較。半袖、長ズボンで気温35°C、湿度60%、晴の環境で1時間過ごした場合(出所:ニュースリリース※PDF)

夏に来日する外国人が増加することが予想されるが、日本気象協会が実施した在留外国人を対象としたアンケート調査において「日本で熱中症の症状を経験したことがあるか?」という質問に対し、「ある」と回答した人が全体の75.5%を占めた。

普段のヒトの代謝量は、月平均の気温と相関があることが報告されていることから、日本の夏を想定し、冷帯、温帯、熱帯出身者の総代謝量を導出した。また、熱帯地域に在住するヒトの四肢における体温は低い一方、頭部・胴体では高いことが報告されており、その実測値と合致するよう代謝分布を推定した。さらに、3歳までに育った地域により能動汗腺の数密度が異なることが知られており、文献による報告に示されたデータに基づき、冷帯、温帯、熱帯出身者の発汗応答を定式化することに成功した。試算より得られた結果は、アンケート調査結果である温熱調整系の相違が出身地に依存することを支持するものであった。

外国人の出身地域を冷帯、温帯、熱帯の3区分とし、日本の夏の環境を模擬した複数の場合におけるリスクを試算した結果、冷帯出身者は汗腺数が少ないため汗をかく量に限界があるため体温上昇傾向が大きいこと、冷帯出身者が暑さになれていない場合、温帯の人に比べて体温上昇は2~3倍になること、熱帯と温帯出身者では、体温上昇、発汗量について大きな相違は見られないことなど、出身地による相違が明らかになった。

また、温帯、冷帯、熱帯気候地域に住むヒトが、日本の夏の環境における生体応答を推定できるようになり、暑さに慣れていない冷帯地域の外国人が夏に来日すると、その体温上昇は日本人に比べて2倍(晴)~3倍(曇)におよぶことがわかり、熱中症のリスクが高まることが示唆された。

日本気象協会は、この研究成果に基づき、3つの入力に対してヒトにあわせたリスク情報を提供する熱中症セルフチェックを開発し、2017年4月よりWebサイトで公開している。来シーズンに向け、この評価システムに基づいた訪日外国人リスク試算の実装を検討しているという。