左右分離型の完全ワイヤレスイヤホンは魔物。一度使うと、あまりの快適さにワイヤードイヤホンには戻れなくなります。ただ現状では1.5~3万円程度の高価なモデルが多く、接続が不安定な製品も少なくありません。2015年に発売された「EARIN M-1」もそのひとつでした。

しかし新世代「EARIN M-2」は、現時点で最高の完全ワイヤレスイヤホンといえる製品かもしれません。

EARIN M-2の発表会を取材しました

EARINを開発したEpickalABは、2013年にスウェーデンで創業したオーディオメーカー。創業者のキリル・トライコフスキ氏、オレ・リンデン氏、ペア・センストローム氏は全員元ソニーエリクソンのエンジニアで、EARINは飲みの席での会話がきっかけで生まれたそうです。初代M-1はApple「AirPods」より前にリリースされ、売り切れ店が続出。5カ月もの入荷待ち状態が続くほど注目を集めました。

弱点を克服し、新機能を搭載

M-1の超小型、超軽量、高音質オーディオの特長はそのままで、M-2ではさらに3つの大きな進化が見られました。

まずは完全ワイヤレスイヤホン特有の接続の課題を克服します。有線イヤホンと違い、完全ワイヤレスイヤホンは音が切れるドロップアウト現象が起こりやすく、M-1でも接続の不安定さがネックでした。

M-2はブラックとアルミニウムの2色が用意され、男女問わず使えるスタイリッシュな仕上がりに

そこでNXP SemiconductorsのMiGLOテクノロジーなる技術を採用。MiGLOは補聴器業界でも使われる近距離磁気誘導(NFMI)で、人体に吸収されにくい10MHz程度の低周波を使った無線伝送を行います。2.4GHz帯とくらべて1/1000の吸収率となるため、電力効率が高く高品質の通信が実現します。

2つめの進化は、スマートノイズリダクションつき通話機能の追加です。通話中に相手側のノイズを下げ、会話を聞き取りやすくします。通話相手側にも、M-2ユーザー周辺のノイズを下げて音声を届けるため、お互いがクリアな音声で通話可能。1~10まで段階的に周囲のノイズを減らせます。

ノイズリダクション機能は通話以外の通常の会話でも威力を発揮します。たとえば騒がしい街中や居酒屋などでの対面の会話でも、周囲のノイズをカットして明瞭な会話ができるようになります。

イヤホン本体には1個につき2つのマイク、左右で計4個のマイクを搭載します

3つめはタッチセンサーの搭載です。音楽の再生/停止、電話の応答、SiriやGoogleアシスタントなど音声アシスタントの起動、ノイズキャンセルのオンオフができるようになりました。

左右関係なく操作でき、タッチ、ダブルタッチ、長押しといった動作に対応。音楽を聴いている最中に声をかけられても、一時停止すればマイクで外の音を拾うため、わざわざイヤホンを外す必要もないそうです。

充電カプセルもより使いやすく

その他の細かな変更もチェックしましょう。充電カプセルはマグネットによってイヤホン本体をカチッと装着できるようになったため、落下を気にせずスムースに出し入れできます。さらに3点のLEDランプを備え、カプセルを開けたときに、イヤホン本体の充電状況がひと目で分かるようになりました。

M-2のケースはコルクになりました

ワイヤレスとなるとバッテリーの持ちが気になるところですが、イヤホン本体のバッテリーは、1回の充電で約3時間使用可能。カプセルはフル充電でイヤホン本体を3回分充電できるので、合計12時間再生できます。

イヤホン本体は左右同じ機能を持ち、装着時にセンサーによって左右を自動判別するため、L/Rを気にせず使えます。また片方を紛失しても、イヤホン本体を単体で購入できるようになるとのこと。

マイクとタッチセンサーを詰め込んだにもかかわらず、サイズはM-1とほぼ変わらず。北欧デザインならではの洗練されたミニマルデザインも特徴的です

EARINアプリも刷新され、周辺ノイズの取り込みレベルの調整や、タッチ方法の変更、左右のイヤホン本体のバッテリー残量の確認やバランスの調整などがカスタマイズできます。ファームウェアのアップデートが可能になるため、今後は新たな機能が増えるかもしれません。

価格は29,800円(税別)。ブラックは2017年8月末、アルミニウムは2017年秋の発売を予定しています。

これだけの課題改善と新機能の搭載がなされ、安定性が向上するのであれば、他に類を見ない高性能の完全ワイヤレスイヤホンとなります。ただ今回発表したものは量産前のプロトタイプで、デザインや仕様、機能は変更になる場合があるようです。製品化でどれだけ完成度が高まるのか、早く試してみたい!