文部科学省は、教育にICT技術を採り入れるよう各機関に呼びかけている。たとえば、ICT端末を一人一台に所持させるようにしたり、小学校からプログラミング教育を促したりするようにだ。この文科省の意向はどのように教育現場に届いているのか。

ある機会を得て、東京・品川女子学院の授業を見学させていただいた。過去にも何校か、ICT機器を活用した授業を拝見させていただいたことはある。それぞれ、学校の工夫や先生の熱意が伝わってくる授業内容だった。だが、品川女子学院といえば、早くからiPadを授業に取り込むなど、しばしばメディアに紹介される学校法人だ。どれだけ“サイバー”な教育環境なのか、興味深く授業見学におもむいた。

昔ながらの教室でデジタルデバイスを活用

教室に案内され、足を踏み入れてみると、意外というかホッとするというか、普通の教室だった。正面には昭和さながらの黒板が立てつけられ、その右上には白い文字盤に黒い短針・長針・秒針を備えた昔ながらの丸い時計が掛けられていた。極端なハナシ、数十年前の昭和時代に学生だった筆者の教室環境と大差ない。ひとつ違うのは、教室の左隅に40~50インチクラスのディスプレイが備えられていること。この大きさのディスプレイは、当時、視聴覚室にしかなかった。

教室の様子。一見、普通の教室だが、生徒たちの机にはiPadが置かれていた

だが、授業が始まってみると、昭和さながらのクラスルームの風景は、平成のソレへと変わった。雰囲気を一変させたのはiPadの存在だ。各生徒の机の上には、教科書、ノート、筆記用具のほか、iPadが用意されている。

しかも、各自のiPadが画一的ではなく、個性的なのに気づいた。それは、iPadかiPad Proかといった機種の違いのほか、カバーやスタンドがまちまちなこと。ピンクだったり水色だったり、オレンジだったりと、各生徒が好みのオプションを取り付けている。学生時代、筆箱は好きなモノを持ち込めたことを思い出した。品川女子学院の彼女たちにとって、iPadはすでに、筆箱と変わらない“文房具”の一種になっているのかもしれない。

そして、見逃せないのが数十台のiPadが同時に活用されていること。これは、複数のデバイスが接続できる無線通信環境が整っていることを表している。