巨大な変革を迎えている業界がある。ズバリ、教育だ。2021年(2020年度)には大学入試改革が実施され、2020年を目途にタブレットやPCなどの端末が生徒一人一台体制になり、小学生のプログラミング教育も必修化される。

こうした激動期だからこそ、筆者は教育に関わる機関や企業に注視してきたが、改革に向け息巻く現場もあれば、混乱に陥っているところもある。では、いわゆる民間の教育企業はどうか。たとえば“予備校”と呼ばれるような法人だ。

矢野経済研究所によると、2015年度の教育産業全体市場規模は約2兆5,000億円で、前年度比0.9%減だという。そのなかにあって、学習塾・予備校市場は約9,570億円。2012年度が約9,380億円だったが、年々微増を続け、2016年度も約9,650億円と堅調な数字が予測されている。

だが、この微増傾向は続くのだろうか。

少子化だけではない暗雲

正直、雲行きは怪しいといわざるをえない。ご存じのとおり、日本はかつてないくらいの少子高齢化を迎えている。教育を受ける世代が減ることで、将来、市場の縮小が始まることは火を見るよりも明らかだ。

そんななか、予備校大手の駿台予備学校を運営する駿河台学園に話をうかがう機会をえた。少子化という難局に対し、今後どのような戦略を立てているのだろうか。

駿台予備学校 西日本教務部 部長 三澤正之氏

駿台予備学校 西日本教務部 部長 三澤正之氏は「確かにこれまでのように、高卒生徒を事業のメインとするのは厳しいでしょう」と話す。予備校といえば、志望の大学に進めず、翌年の試験に期して高卒生徒が勉強する場、というイメージが強い。いわゆる“浪人生”と呼ばれる層のための“学舎”だ。駿台予備学校は、こうした層への受験対策教育を主戦場にしてきた。

だが、大学受験を取り巻く様相は変化している。まず挙げられるのが、前述した少子化だ。受験者数が減れば競争率も下がり、合格しやすくなるのはごく当たり前のことだ。2000年台に入り、大学が増えたことも、競争率低下に拍車をかけている。

続いてAO入試の浸透が挙げられる。学力試験が課されず、面接や高校在籍時の成績、あるいは何かしらの実技によって入学が許可されるAO入試が広まったことで、受験勉強の必要性が薄まっている。

そして、“現役主義”が好まれるようになったことも、浪人生相手の予備校にとっては逆風だ。現役主義が広まった背景には、リーマンショックによる子育て世代の収入減不安により、浪人生への支出がひかえられるようになったことが挙げられる。また、ここ数年は“売り手市場”とよばれるほど就職環境がよくなったが、これはこれで“今、現役入学して早く就職するべき”という行動に結びつく。

現在、大学受験生を抱えている親のなかには、バブル崩壊による“就職氷河期”を体験した方も少なくないだろう。そうした方々からみれば、いつこの売り手市場が消え去るか、その経験上から現役主義に傾いているのかもしれない。