--HP Jet Fusion 3Dプリンティングソリューションは、3Dプリンティングの世界にどんなインパクトを与えますか?

ナイグロ:現在の3Dプリンティングの主な用途は、プロトタイプを作るために使われているか、医療分野や航空業界、宇宙業界で利用する、限定的で、付加価値の高いパーツを製作するために使われています。しかし、いまの3Dプリンティングには、スピード、品質、コストという3つの課題があります。HPのMulti Jet Fusionプラットフォームは、これまでの3Dプリンティングとはまったく異なる技術によって、これらの課題を解決するものになります。むしろ、HPでは大きなビジネスチャンスが生まれると考えています。そのひとつの特徴が、21μm×21μm×80μmで構成されるボクセル(Voxel)単位で、色やテクスチャーなどの特性を変えることができるという点です。たとえば、タイヤのなかにセンサを埋め込むといった造形も可能であり、IoTを視野に入れた部品を作り出すことができます。

完成した部品など。医療分野などでも利用される

こちらはセンサを埋め込んだタイヤ

--HPは、HP Jet Fusion 3Dプリンティングソリューションの最初のゴールをどう設定していますか?

ナイグロ:1つは3Dプリンティング市場のマーケットリーダーになるということです。そして、もう1つは、3Dプリンティング市場そのものが年率30%以上の成長を遂げると予測されていますが、この市場成長を牽引する役割を果たすことです。

--日本市場におけるHP Jet Fusion 3Dプリンティングソリューションの導入ターゲットはどこに置きますか?

日本HPの岡隆史 社長

岡:日本は製造業が多い国ですから、我々にとって大きなビジネスチャンスがある市場です。まずは、より多くのお客様に使っていただくための仕掛けをすること、そして、早期に国内で数社が導入し、量産現場での活用実績を作っていきたいですね。これをいかに早く作れるかが、最初の1年の重点ポイントです。すでに商談はスタートしています。米国で発表後、海外の展示会などを訪れ、現物を直接見たというお客様もいますし、なかには、現場で使用しているデータを持ち込んで、スピードや品質の面から、実際に使えるかどうかをテストしているユーザーもいます。

一方で、日本において、武藤工業とリコージャパンという、この分野に高い専門性を持ち、しかも全国規模で販売展開でき、保守サポートができるパートナーと手を組むことができたのには大きな意味があります。両社はともに、すでに3Dプリンタを販売した実績がありますし、製造業に対して、強いパイプを持っています。そうした2社が、改めて、日本HPと、3Dプリンティングでタッグを組んだわけです。そこからも、日本HPの3Dプリンティングソリューションが、高く評価されていることがわかっていただけるのではないでしょうか。日本においても、意欲的な販売目標に挑んでいきます。日本HPは、産業印刷分野においても印刷のデジタル化を推進していますが、それと同じことを製造業の分野でも、3Dプリンティングによって引き起こそうとしています。

ーー今後、3Dプリンティング事業の拡大に向けてどんなことに取り組みますか?

ナイグロ:先にも触れたように、1年前にこの製品と技術を発表し、いよいよ大規模に販売するフェーズに入ってきました。1年後には素材の種類が拡大しているでしょうし、これによって、さまざまな色を使ったパーツができるようになったり、ボクセルレベルで定義する使い方がより増えていくと思います。また、3Dプリンティングソリューションの導入事例も増えるでしょう。そして、我々も製品のラインアップを拡大することになります。より低価格帯の製品や、より生産性が高いハイエンド製品も登場すると思います。

--ちなみにこの技術は、コンシューマ向けにも広がっていく技術なのでしょうか?

ナイグロ:この技術は、生産性が高いものに向いており、あくまでも業務用に適した技術です。ですから、コンシューマ向けの3Dデスクトッププリンティグに利用するものではありません。もしかしたら、教育分野などの利用があるでしょうが、そこまでスピードや品質が求められる市場ではありませんから、やはりターゲットは産業用途になります。