運動のカルチャー化を目指す体験型展示

"ヘルスイノベーション"がテーマの「アクティブでいこう! ものぐさ→アスリート化計画」は、情報科学技術による表現の可能性を探る研究を定期的に紹介するコーナー「メディアラボ」の第18期の展示で、設置期間は11月22日まで。立命館大学スポーツ健康科学部学部長・教授の伊坂忠夫氏による出展だ。

スマート・センシングウェア「心衣(こころも)」。体温・発汗・血圧・心拍数・関節角度などの生体情報を着衣して読み取ることができるウェアラブルそのものの技術。センシングしたデータをリアルタイムに表示するデモンストレーションも行われる

リーダーを務める立命館大学を中核に、13の大学や企業などにより構成する「アクティブ・フォー・オール拠点」で研究・開発中の技術の中から、日々の暮らしの中で人々が運動をしたくなるようなカルチャー化を目指した大きく分けて3つの取り組みが紹介されている。

指向性が高く、届く範囲を制御しやすい超音波を応用した"空間シェアリング"技術の展示。「音玉(おとだま)」は、音が聞こえる小さなスポットを探して聞き取るスピーカーだ

1つ目がスマート・センシングウェア「心衣(こころも)」。体温・発汗・血圧・心拍数・関節角度などの生体情報を取得するセンサーを組み込んだシャツで、データをもとにしてアドバイスを送り、過重労働を防ぐなどさまざまな実用的な展開が考えられている。 2つ目が「空間シェアリング技術」と呼ばれるもので、指向性が高く届く領域を制御しやすい超音波の特性を応用した3種類の特殊スピーカーを展示している。

「音扇(おんせん)」は曲面のスピーカーで扇形の範囲に音を出すことができる

人の居る場所を追跡しながらその方向に自動で向きを変える「音的(おとまと)」

3つ目は「おえかきんでん」。筋肉から発せられる微弱な電気信号を読み取るセンサーを腕に装着し、そのデータに基づき生成される音やグラフィックによる表現をゲーム感覚で楽しむことができるという体験型のインタラクティブ展示だ。

体験型のインタラクティブ展示「おえかきんでん」。筋肉からの微弱な電流のデータに基づき生成される音やグラフィックで表現を楽しむコンテンツ。センサーを備えた腕帯を装着して電流を読み取る

金星探査の最新動向を展示に

5階に常設されている、太陽系や宇宙、地球の深部など未知の地帯への研究活動を紹介する「フロンティアラボ」内にも、「金星探査機『あかつき』の挑戦」と題した"金星探査"をテーマにした展示が新設された。2015年12月に日本初の惑星周回衛星となった金星探査機「あかつき」の5分の1模型やリチウムイオン電池など実際に搭載されている装置の同等品、最新の研究成果が、宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究所教授の中村正人氏らの監修のもと紹介されている。

「金星探査機『あかつき』の挑戦」の展示。金星探査機「あかつき」の5分の1模型やリチウムイオン電池など装備品の同等品を見ることができる

レセプションで挨拶する、日本科学未来館・館長の毛利衛氏

新常設展示の公開に先駆け、関係者や監修者が列席したレセプションも開催された。冒頭に登壇した日本科学未来館・館長の毛利衛氏は「"不易流行"を大事にしている未来館では、不易=変わらないものとして、例えば若い人たちが研究者に対して憧れを抱いてそれを目指す気持ちを持ってもらうために、研究者の顔が見えることを開館時から大事にしている。一方、流行ということでは、情報通信やロボット、宇宙開発といったさまざまな最前線の研究を科学コミュニケーションによって一般の方々が出会えること。未来館の活動は、地球上に100億人の豊かな世界をつくるために科学コミュニケーションの分野で世界の科学館の中心拠点になるという2020年に向けた未来館のビジョンにすべて基づいている。今回の常設展の新設もそのステップのひとつです」と挨拶した。