ヤフー宮坂氏が退任、国内事業への関心は弱まる

そしてソフトバンクグループは、緩いつながりによって世界的な企業連合体を構築することにより、グローバル企業として継続的に成長できる体制を作り上げることを目指している。そのことを同社では、「Softbank 2.0」として表しており、ソフトバンク・ビジョン・ファンドもSoftbank 2.0の実現に向けた取り組みの一環となっている。

では今後、ソフトバンクグループはファンドを通じて、どのような企業への出資を進めようとしているのだろうか。具体的には同社が成長分野として挙げている、IoT、AI、ロボットの3分野が主体になると考えられる。

ARMの買収もIoTの拡大に向けた一環といえるだろうし、6月にはロボットの研究開発を手掛けているボストン・ダイナミクスを買収し、話題となっている。それゆえ今後も、これら3分野に関して先端テクノロジーを持ち、成長性が見込めるベンチャー企業などへの出資を世界的に進めていくといえそうだ。

ソフトバンクグループは6月に、リアルな動きをするロボットの研究・開発で注目されるボストン・ダイナミクスを買収。先進技術を持つ企業への積極投資を進めている

一方で退任する取締役からは、ソフトバンクグループがどの分野に対して注目を失っているのかが見えてくる。今回の株主総会では、ヤフー代表取締役社長の宮坂学氏が取締役を退任しているが、ヤフーはソフトバンクグループの国内におけるインターネットサービスの中核を担う企業でもある。

それだけに宮坂氏の退任からは、ソフトバンクグループが国内事業への関心に成長を期待しなくなってきていることが見えてくる。既に孫氏は、成長が停滞してきている国内携帯電話事業に対する関心を大きく落としているが、ヤフーもスマートフォンへの対応や、2013年の「Eコマース革命」で弱みだったEコマース事業の改善を進めて以降、業績の大きな伸びは見込みづらくなってきている。国内事業は次の投資につながるキャッシュフローを生み出す源泉として業績の安定化にとどめ、今後はファンドによる投資を主力事業として海外で成長を拡大させたいというのが、同社の新たな方針といえそうだ。