後継者はグループから

孫氏は次のように話す。「原則として、我々グループのなかで、5年、10年、私とともにソフトバンクの重要な経営の役割を一緒に担って、十分に気心が知れて、十分に同じ方向で経営をひっぱっていってくれると。能力、人格に優れていると。そういう人物を後継者として指名しなければいけないなと思っている」。

ただし、ニケシュ氏が去ったばかりのことであり案があるわけではなく、今後10年かけて取り組んで行くべきこととする。「直近の二代目はおそらく、我々のグループのなかで活躍している経営陣から、選ばれることになる」とも孫氏は発言しており、すべての表現が推量となっている。後継者問題は孫氏の頭の片隅に置かれた課題になってしまったようだ。

ソフトバンクグループには、後継者育成を目的とし、2010年に開校したソフトバンクアカデミアもある。これについては「役員あるいは社長として活躍するメンバーが続々と出ている。そこからすぐ後継者として目を付けてはいないが、こういうことは継続してやっていくことに意義がある」と話す。

また、昨年12月に 孫正義育英財団もスタートしたが、これについても後継者育成とは結び付けておらず、「アカデミア、育英財団は3代目、4代目、5代目の経営陣を育成するのに役立つと思う」などと述べる程度だ。

後継者は存在するのか

孫氏は今夏に60歳を迎える。経営者としては若くもなく、年をとりすぎてもいない。まだまだ活躍できる年齢だ。ここまで後継者問題がクローズアップされる企業も珍しいが、それは、孫氏がソフトバンクグループで果たす役割の大きさ、存在の大きさを反映しているとも言えるだろう。

問題は、孫氏の存在が大きくなればなるほど、後継者に求められる資質も高くなっていくと思われることだ。本気で後継者を探す段階では、ニケシュ氏を大きく上回る資質の持ち主と考えても不思議はない。ソフトバンクグループがさらに大きくなり、手がける分野が多岐に渡れば求められる資質にも変化が出てくるはずだ。「AIを後継者にするつもりは?」といった突飛な質問も株主総会では出たが、そう思いたくもなってくる。孫氏は「人工知能の能力は上がっていくが、是非、生身の人間に後継者になってもらいたい」と回答したものの、真に後継者が必要となった段階で、果たしてふさわしい生身の人間を見つけることができるのだろうか。株主の素朴な疑問が後継者問題の核心をついているようにも思えてくる。