今回のレビューで1つ残念だったのは、本体にインストールされているのがiOS 10だった点だ。10.5インチiPad Proの体験は、秋にリリースが予定されるiOS 11との組み合わせによって、完成すると考えているからだ。

iOS 11には、iPad向けのこれまでで最も大きなアップデートが含まれる。そこには、iPadがMacやWindows PCと並ぶ、効率的な仕事運びができる環境へと進化するための、各種新機能が盛りこまれているのである。

まずは作業環境。MacでもおなじみのSpacesがiPadのマルチタスクメニューと置き換えられ、1つのアプリ、もしくは複数のアプリを組み合わせた画面分割もスペースに保存できるようになる。アプリ切り替えと言うよりは、作業もしくは仕事の切り替えを行えるようになるのだ。

iOS 11ではマルチタスクも改善され、これまではできなかった画面分割中の別アプリのフロート表示にも対応し、フロートも左右どちらにでも配置できるようになった。加えて、ピクチャ?イン?ピクチャでのビデオ視聴も可能となっているので、最大で4つのアプリを同時に表示することもできるようになった。

また「ファイル」アプリが公開されたことで、iPadにファイル管理のアイディアが持ち込まれた点も、MacやWindowsのユーザーにとって安心材料となる。このファイルは、Box、Dropbox、OneDriveといったクラウドストレージをサポートし、iPad内、iCloud内、クラウドストレージを串刺しにしたファイル検索もサポートする。これはMacよりも便利な仕様だ。

拡大された、病みつきになる高性能ディスプレイと、多くのデスクトップPCを追い越す処理性能。ハードウェアの魅力を備えた10.5インチiPad Proだが、ソフトウェアとの組み合わせによって完成するというのも、Appleらしい強みを生かした魅力と言える。

iOS 11へのアップグレードは秋に無償で提供される。iPadのプレゼンスが一気に高まる前に、自分用のiPad ProとApple Pencilを確保しておくのが良いだろう。

松村太郎(まつむらたろう)
1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura