5月30日、特定非営利活動法人NEWVERYが運営するポータルサイト、マンナビが行った、漫画家のデジタルツールの使用状況についてのアンケート結果を、セルシスが自社のWebサイト上で、最新情報として掲載した。
今回のアンケートの調査対象は、特定非営利活動法人NEWVERYが運営する、漫画家志望の若者に格安で住居を提供することで、クリエイターとしてのスタートアップ期を支援する「トキワ荘プロジェクト」の入居者、ならびに入居者であったOB・OG、さらに過去に同トキワ荘プロジェクトが実施したイベントや講習会への参加者、ほか関わりのある教育機関など。アンケートは、これらの対象にTwitterなどのSNSを含む連絡手段を通して収集し、有効回答数は263件。その内訳は、最も近いものを択一選択する選択項目別の割合順に、「プロ漫画家(自分のマンガ制作が収入の中心)」が48.7%、「それ以外の漫画家志望者」が17.9%、「新人漫画家(受賞・掲載経験あり)」が14.4%、「その他」が6.8%、「同人作家(同人が仕事の中心)」が5.3%、「プロアシスタント」が3.8%、「マンガ教員」が3.0%。性別の割合は、男性30.4%、女性69.6%。年齢の割合は、20代以下が27.4%、30代が38.8%、40代が22.8%。50代以上が11%。
2017年6月5日 記事修正:
アンケートの実施・調査主体、ならびにアンケートの調査対象について、記事への記載が不十分との指摘をいただきました。読者・関係者の皆様への影響に配慮し、これらを出来る限り明記する内容に修正しております。ご迷惑おかけした皆様に、深くお詫び申しあげます。
プロ漫画家の7割がフルデジタル
マンガをどれくらいデジタルで制作しているか尋ねると、「全てデジタル」と答えた人が57.8%、マンガ全てをアナログで制作しているのはたったの4.6%だった。
プロとアマチュアなど漫画家を状況別に分けて調査すると、「全てデジタル」でマンガを制作しているのはプロの72%(128人中92人)、新人漫画家の42%(38人中16人)、漫画家志望者の32%(47人中15人)が、全てデジタルでマンガを制作していた。デジタルの使用は自分がプロかアマチュアかなど、漫画家としての状況が関わっていると考えられる。
作業の効率化やコストを削減できるデジタル制作
デジタルで実施していることを尋ねると、スクリーントーン、ベタ・ホワイト、カラーの色つけは9割以上の漫画家がデジタルで行っていた。スクリーントーンのような一般的にアシスタントがするような作業は、デジタルで行っているようだ。なお、デジタルツールで最も多くの人が使用していたのはCLIP STUDIO PAINTだった。
デジタル制作のメリットを尋ねると、作業時間の短縮やコストが削減できたという回答が多かった。デジタルを使用すれば紙やインクが必要ないのはもちろん、アシスタントの数も削減できる。それと同じくらい、書き直しが楽という意見も多かった。アナログの修正は、ホワイトが重なることや配置をずらす際の手間、拡大縮小などの作業に、難しさや面倒さがあるが、デジタルならすぐに修正できるという。
一方でデメリットを尋ねると、「アナログ同様の仕上がりを目指すことが大変」という意見が多かった。アナログ作画からデジタルに移行したプロ漫画家が多くいるため、自分の持ち味や技術がデジタル化によって失われることに危機感を持つ人が多いと考えられる。
もはや全てアナログでマンガを描くのは少数派で、手書きの色紙が描けなくなると恐れる漫画家もいるという。「マンガのデジタル化」は、読者よりも作家のほうが進んでいるのかもしれない。