継続的成長のため必要 リカーリング型ビジネスの拡大

一方で、平井社長は、「2017年度は、通過点に過ぎず、今後も持続的に発展していく必要がある。持続的に高収益を創出し、新たな価値を提供し続ける企業を目指す」と述べ、営業利益5000億円は通過点であることを強調する。

これは、2017年度が第二次中期経営計画の最終年度であるとともに、2018年度以降の第三次中期経営計画を策定する年であることを意識した発言だともいえる。

「2017年度の連結営業利益5000億円は、20年ぶりの利益水準だが、この利益レベルを複数年に渡って継続できたことは、ソニーの71年の歴史のなかで一度もない。2017年度は大きな節目となる重要な年であり、各事業において、今年度やるべきことを着実に実行し、目標の達成を目指すが、この目標を達成したのちも、ソニーは、持続的に高収益を創出できる企業でなくてはならない。高収益を創出しつづけるためには、ソニーグループとしても、各事業の現状維持ではなく、新たな事業への取り組みを強化していくことが不可欠である。高収益を持続的に確保し、新たな価値を作るために、具体的な方針、計画に落とし込む必要がある」と語る。

平井社長が、持続的な成長を強く訴える背景には、リカーリング型ビジネスの拡大がある。

リカーリング型ビジネスとは、特定の顧客と継続的で安定したビジネスを行うもので、第二次中期経営計画の柱のひとつに据えている。リカーリング型ビジネスは、保険などの金融ビジネスのほか、ネットワークサービスやテレビチャンネル運営などによる「サブスクリプションモデル」、デジタル一眼カメラのレンズやゲームソフトなどの「追加購入モデル」、音楽制作やテレビ番組制作などの「コンテンツ事業」の3つに大別できるという。

平井社長によると、「2015年度には約35%だったリカーリング型ビジネスは、2017年度には約40%に拡大する見込みである。今後は、サブスクリプションモデルをはじめとする顧客と直接つながるサービス領域の将来性がとくに高いと考えている」とする。

安定した高収益拡大のために、顧客との持続した付き合いを前提としたリカーリング型ビジネスが拡大しているからこそ、持続的に成長できる基盤が完成するというのが平井社長の考え方だ。

ソニーの完全復活と言い切るには、まだ道半ばであるのは確かだろう。2017年度の営業利益5000億円の達成にも、外部環境の変化を受けやすい事業については、まだ不安要素もある。

しかし、その一方で、次の成長に向けた地盤づくりは着実に進んでいるのも確かだといえる。その代表がリカーリング型ビジネスの拡大だ。

2014年度までの第一次中期経営計画は、ソニーの変革を中心とした施策が相次いだ。それに対して、2015年度からスタートした第二次中期経営計画では、「利益創出と成長への投資フェーズ」と位置づけている。その道筋は着実に歩んでいるともいえる。

2017年度の営業利益5000億円が目論見どおりに達成されれば、ソニーの復活は本物だといっていいだろう。そして、その時には、継続的な成長基盤が整うという要素も付加されることになるだろう。