京都大学iPS細胞研究所(京大CiRA)は5月3日、遺伝子Zic3とEsrrbの組み合わせが適切な細胞代謝のバランスを調整する鍵となり、iPS細胞を効率的に作製するうえで重要であることを突き止めたと発表した。

同成果は、京大CiRA 曽根正光研究員、山本拓也講師らの研究グループによるもので、5月2日付の米国科学誌「Cell Metabolism」に掲載された。

これまでの研究で、初期化因子を導入すると、体細胞からiPS細胞へ初期化することは確認されていたが、初期化の効率が悪く、多くの細胞はiPS細胞にならずに残っているという課題があった。

同研究グループはこの原因について、iPS細胞へと細胞が変化するときに、初期化因子の働きが互いに拮抗し合っている可能性があり、その拮抗は酸化的リン酸化から解糖系へと細胞代謝が変わる過程で起きていると考えた。したがって、酸化的リン酸化と解糖系の細胞代謝のバランスが初期化の鍵であると考えられたが、そのバランスを調整するものが何かは明らかになっていなかった。

今回の研究では、マウスの繊維芽細胞に、初期化因子であるOct4、Sox2、Klf4(OSK)とともに遺伝子Zic3とEsrrbを導入すると、Zic3とEsrrbが細胞代謝を制御し、相乗的に初期化の効率を上げることを発見した。OSKのみの導入の場合と比べ、作製量は1桁以上増加したという。

Zic3とEsrrbは共同で解糖系の細胞代謝を促す一方で、Zic3は酸化的リン酸化を抑制し、逆にEsrrbは酸化的リン酸化を活性化していることが明らかになった。また、Esrrbによる酸化的リン酸化の活性化が、初期化に重要であるということもわかっている。

今回の研究成果の概要 (出所:京大Webサイト)

同研究グループは今回の成果について、「転写ネットワークと細胞代謝ネットワークが連携して細胞の初期化を進行させていることが明らかとなりました。今後も、未だ不明な点が多い体細胞初期化の分子メカニズムの解明を目標として、研究を行っていきたいと思います」とコメントしている。