パデュー大学の研究チームは、グラフェンを用いて高感度で光検出を行える電界効果トランジスタを作製した。天体観測などにも使える超高感度カメラ、ディスプレイ、センサ、高速通信などへの応用が期待できる。研究論文は、ナノテク専門誌「Nature Nanotechnology」に掲載された。

高感度で光検出ができるグラフェン電界効果トランジスタ(出所:パデュー大学)

グラフェンを利用した光検出器はこれまでにも報告されているが、グラフェン近傍の小さな限られた領域でしか光を感受できないという問題があった。デバイス全体のサイズに比べて光反応面積が小さくなるため性能に限界があった。

高性能なグラフェン光検出器を実用化するためには、より大きな面積で光に反応できるようにする必要がある。研究チームは今回、シリコンカーバイド(SiC)上に配したグラフェンを利用して、光反応面積を大幅に増大できるデバイス構造を開発した。使用するグラフェンは微小なサイズだが、SiC上でグラフェンからの距離が遠いポイントで受けた光も検出できるようにした。

その仕組みは、SiC裏面とグラフェン表面に電圧をかけて、SiC中に電界を生成するというもので、電界効果トランジスタの一種であるといえる。デバイスに光が入射すると、SiC中にフォトキャリア(光によって励起した電荷)が生成される。フォトキャリアによって電界強度が変化し、これにともないグラフェンの電気伝導度も変化する。グラフェンの電気伝導度の変化を測定することで光の検出が行える。

この方法では、光がグラフェンに直接当たらなくても、また光の当たったポイントがグラフェンの近くになくてもよく、光の入射点とグラフェンとのあいだにSiC上で500μmから1mm程度の距離があっても検出可能であるという。SiC中のどの位置に光が入射したかによって、反応の強さは10倍以上変動する。また、光が入射してきた方向を測定することもできる。

このデバイスの動作原理は光検出器だけでなく、放射線検出用のシンチレータにも応用できる可能性がある。シンチレータは放射線を受けると短時間だけ蛍光発光する物質を利用し、その発光(シンチレーション)を光電子増倍管でとらえることで放射線を検出する装置であるが、グラフェンを用いても同様の放射線検出が可能であると考えられている。