ダブルエルは、そうした海外の書籍事情に着目し、日本のマンガを主軸に各国向けに翻訳、電子書籍化をし、配信している。現在、400名以上のマンガ家から許諾を受け、海外にマンガを届けている。同社がコンタクト可能なマンガ家としては、いわゆる巨匠、大物と言われるマンガ家から、駆け出しのマンガ家まで多岐にわたり、多くのマンガ家から同社の取り組みが支持されている。

では、海外でのこうしたマンガ電子書籍の展開は、どのような収益を生むのか。

ご存じのとおり、日本では“印税”と呼ばれるシステムで、著作権者のロイヤリティーが保証されている。マンガ本が売れれば売れるほど印税が発生し、著作権者に支払われる。ところが海外では、この印税の制度が整っていないことすらある。また、“海賊版”と呼ばれる違法コピーが横行していた。だが、保手濱氏によると、海外での海賊版に対する意識は高まっており、著作権という考え方が浸透してきているという。

とはいえ、海外では長いこと海賊版が横行した結果、「マンガはタダで読むもの」という習慣が身についたユーザーがまだまだ多い。そこでダブルエルは、作品によっては無料での電子版配布にも応じているという。

「無料では著作権者は丸損ではないか……」と思う方もいるだろう。何を隠そう、筆者もそう考えてしまった一人だ。だが、ダブルエルの話を聞き進めていると合点がいった。

二次使用料を作者に還元

それは、こういうことだ。海外では無料でのマンガ閲覧が常態化している。つまり、無料のコンテンツであれば、爆発的に広がる素地があるといえる。そして、大人気のマンガとなれば、映画化・ゲーム化への道がひらける。その映画やゲームでの原作使用料を著作権者に戻すというのが、同社の大きなねらいなのだ。

事業所内にギッシリと並べられたマンガと保手濱氏

日本では印税というシステムがある。だが、映画化やゲーム化による原作使用料は想像以上に低いらしい。たとえば、あるマンガを原作にした、興行収入約60億円に届こうかといった大ヒット映画では、原作者に100万円ほどしか払われなかったらしい。もちろん、映画がヒットすることで原作マンガが売れ、結果的に印税が作者に還元されるのだが……。 さて、同社によると、国や地域、時勢によって人気のマンガ、アニメが異なってくるという。たとえばアニメ「グレンダイザー」。これは「マジンガーZ」に連なる3部作の最終作なのらしいのだが、中東ではマジンガーZをはるかに上回る大人気だそうだ。日本で人気を博したマジンガーZの放映権料が高額で、あまり人気のなかったグレンダイザーを輸入した結果、中東では根づいたという。

また「F」(エフ)というマンガは、F1で「セナ・プロ」ブームが起こり、中嶋悟が活躍した時期に大ヒットした。今はインドネシアでF1が大人気になっている。東南アジア初のF1パイロットが同国から誕生した影響だとのことだ。だからこそ、今こそ「F」をインドネシアに輸出する土壌が整い、同社はこれに取り組んでいる。