韓国のSamsungは3月20日、人工知能(AI)技術を利用した音声パーソナルアシスタント「Bixby」を発表した。Google AssistantやMicrosoftのCortanaのような検索サービスと連携して様々な情報も収集するアシスタントと異なり、Bixbyはデジタル機器やアプリケーションの使用を手助けすることにフォーカスしている。「インテリジェント・ユーザーインターフェイス」だ。最初の搭載デバイスは、今月末に発表する予定の新フラッグシップスマートフォン「Galaxy S8」。同社は3月29日に製品発表イベント「Galaxy UNPACKED 2017」を開催する。

「Galaxy UNPACKED 2017」の告知ビデオでは、従来のスマートフォンの常識を変えるようなデバイスの登場を予告、新しいインテリジェントな音声アシスタントを連想させるシーンもあった

スマートフォンやタブレットの多機能化・高機能化が進んでいるが、それらを使いこなすためにユーザーは長い時間を学習に費やさなければならない。一方で、ユーザーはシンプルで分かりやすいユーザーインターフェイスを求めている。そこでSamsungはデバイスを使いこなすためのラーニングカーブを、ユーザーが直観的に操作できるぐらいにフラットにするためにAIの活用に乗り出した。その成果がBixbyである。既存のモバイルデバイス向けに提供されているパーソナルアシスタントとの違いとして、以下の3点を挙げている。

  • コンプリートネス(完全性):アプリケーションがBixbyに対応すると、そのアプリケーションで従来のインターフェイス(タッチ操作など)を用いてできることほぼ全てがBixbyでもサポートされる。「既存の音声アシスタントの多くはサポートするタスクが限られ、そのため音声コマンドで機能することとしないことにユーザーが戸惑う」と指摘している。
  • コンテキスト・アウェアネス:対応アプリケーションにおいてBixbyはユーザーの状況や振る舞い、操作などを理解し、コンテキストを踏まえて常に臨機応変に対応する。たとえば、シームレスにタッチ操作と音声(Bixby)を行き来しながら継続的にタスクを完了させることが可能。音声アシスタントを呼び出した際に、新たなタスクから始める手間を避けられる。
  • コグニティブ・トレランス(認識許容):使用できる音声コマンドが増えても、ユーザーが正確に記憶しておけるコマンド数には限りがある。Bixbyは、ユーザーのコマンドが不完全であっても実行不可能とするのではなく、ユーザーの意図を推測し、それに応えられるようにユーザーとインタラクトする。

新しいインターフェイスに直面した時に拒否反応を示すユーザーが少なくない。そして古い方法(タッチ操作など)に固執してしまう。音声インターフェイスの活用をスムースに実現するために、Bixbyの開発では拒否反応を取り除くデザインに努めた。アクティベーション方法も、その1つだ。ホームボタンの長押しのような既存の音声アシスタントのアクティベーション方法は分かりにくく、アクセスしにくいと考え、専用ボタンを用意した。Galaxy S8は側面にBixbyボタンを装備する。

最初のBixby対応デバイスになるGalaxy S8では、プリインストールされるアプリケーションの一部がBixby対応になる。The Vergeの記事によると、最初のサポート言語は英語と韓国語。以降、対応アプリとサポート言語を拡大しながら、サードパーティのアプリ開発者向けのSDK提供を実現する。またスマートフォンの操作アシスタントからスタートするが、将来的にはエアコンやTVなど広く電化製品のコントロールをサポートするアシスタントに成長させる計画だ。Bixbyはクラウドに実装されており、音声入力を処理できるインターネット接続デバイスなら基本的にBixbyに接続できる。

Samsungは昨年10月に、AIアシスタント「Viv」を開発する米Viv Labsの買収を発表した。Vivは、Appleのパーソナルアシスタント「Siri」のベースとなった技術・サービスを開発したチームが立ち上げたスタートアップだ。Viv Labsは買収完了後もSamsung傘下の独立会社として存続している。Bixby開発におけるVivチームの役割は不明だが、Vivはオープンなプラットフォームであり、The Vergeは、サードパーティーのサービスとの連携といったエコシステム構築においてVivが好影響をもたらすと指摘している。