ネスレ日本が2017年3月1日より、新サービス「ネスレ ウェルネス アンバサダー」を開始した。コーヒー、キットカットに続く第3の事業で、“抹茶”がその主役だという。なぜ抹茶なのか。そして新サービスによる同社の狙いは何か。

なぜ抹茶なのか

2~3兆円ともいわれるサプリメント市場に参入

なぜネスレ日本は抹茶を第3の柱に位置づけるのだろうか。1つには、抹茶商品に関して同社に大きなアドバンテージがあるためだ。

「キットカット」は世界100カ国以上で展開しているブランドで、抹茶味は日本土産としても人気だ。また、コーヒーマシン「ネスカフェ ドルチェ グスト」も世界80カ国、累計3,000万台を販売しており、カプセルをセットすれば簡単にコーヒーやラテ、抹茶などの飲み物を楽しめる、いわば抹茶ビジネスのインフラ的な存在だ。メイド・イン・ジャパン食材が世界的に注目されるなかで、ネスレ日本が抹茶を第3の柱とするのには、十分な裏づけがあるようだ。

しかし実は、ネスレ日本が抹茶を打ち出すのにはもっと大きな理由がある。巨大な健康食品市場を抹茶で開拓しようというのだ。先日の事業戦略発表会でネスレ ウェルネス アンバサダーについて語ったネスレ日本・代表取締役社長兼CEOの高岡浩三氏は、サプリメントの市場規模を現状で1兆6,000億円と分析し、そのうち2~3兆円に拡大する可能性があると予想。この市場に抹茶で参入したいという考えを示した。

ネスレ日本の高岡CEO

抹茶を手軽に、健康作用も

同社ではまず、抹茶にあると言われる健康作用に着目した。ネスレ日本の調べによれば、抹茶には「ポリフェノール」が緑茶の約2倍含まれる。また、緑茶と違い、粉にひいた茶葉そのものを飲む飲料のため、茶葉の食物繊維のほか、ビタミンA、D、E、Kといった脂溶性ビタミンも合わせて、そのまま摂取できるという利点がある。

なお、ポリフェノールとは植物の色素に含まれる成分で、抗酸化作用を持つことから、5大栄養素や食物繊維に次ぐ重要な栄養素として研究が進められてきている。コーヒーや緑茶にも多く含まれ、ネスレ日本によると、日本人ではコーヒーから摂取している人が約47%、緑茶から摂取している人が約16%だという。

一方で、日本人のポリフェノール摂取量は理想的と言われるより少なく、さらに緑茶の消費量がペットボトル飲料を含め、20年前に比べ約20%減少してきているという。そこで、「抹茶をもっと手軽に飲めるようになればよい」という発想が出てくるわけだ。

健康食品としての可能性を秘める抹茶。次に問題になるのが、販売方法だ。飲料メーカーをはじめとする大手企業がこぞって参入する健康食品市場だけに、「(抹茶を)健康食品やサプリメントとして発売しても、過当競争に巻き込まれるだけ」(高岡氏)だからだ。

では、同社は健康食品市場でどのようにして勝ちにいくのか。