抹茶を選んだ大事な理由
「なぜ抹茶なのか」ということでは、意外かつもっともな理由もある。それは味だ。「いろいろな飲料を試したが、抹茶が一番まずくならない。健康のために『まずい』と言いながら飲む時代ではない。続けてもらうためにも、おいしいことは必須」と高岡氏は語る。つまり、各種ビタミンやグルコサミンといった栄養素を加えると、どうしても飲み物として成立しない味になってしまう。抹茶はもともと渋み、苦みを楽しむ飲み物であるため、栄養成分の味を緩和しつつ、おいしく仕上げることが可能というわけだ。
しかし、食品のみならず、「健康」に関わる商品の市場で避けて通れないのは、「怪しさ」をいかに回避するかという問題だ。まず医薬品ではないので、効果効能をうたうことはできない。また、多くは臨床データによる裏付けがないため、本当に身体によいものなのか、お金を払う価値があるものなのか、消費者にとっては分かりにくい。名の知れたメーカーでも、著名人やタレントに「私も飲んでいます」と言わせる広告戦略で顧客を集めているのが現状だ。
しかし、今回の「ネスレ ウェルネス アンバサダー」では、ポリフェノールという、すでにある程度知られた栄養素に着目したこと、また、必須ビタミンやミネラルを主体とする抹茶カプセルを扱っている点で、「怪しさ」というイメージからは逃れられていると言えるだろう。
また、サイト上の健康チェックはゲーム感覚で気軽に行うことができ、ニュースの占いをチェックするような感覚で、日々、自分自身の健康を振り返ることができる。会社に行けば、コーヒーマシンを囲んでの会話のネタにもなりそうだ。このようにカジュアルな感覚で行える部分は生活の中に取り入れやすい。
もともとは「健康」イメージの強い企業
ではネスレ ウェルネス アンバサダーの反響はどうだろうか。具体的な数字は社外秘とのことだが、2017年3月1日のスタート以降1週間で、会員への応募は目標値の倍になったという。
ネスレはグローバルにおいて、「栄養、健康、ウェルネス」という目標を第一に掲げている。もともとベビーフードの会社であり、海外ではベビーフードで圧倒的なシェアがあるため「健康」イメージとの相性はよいと言えるだろう。しかし、日本では「コーヒー」の知名度が先行しているので、ともすれば健康とは相容れないイメージがある。今回の抹茶作戦は、ネスレ日本の企業価値を転換する契機となるかもしれない。