3月1日、カシオの時計用新世代モジュール「Connected エンジン 3-way」と、これを初搭載する新作G-SHOCK MASTER OF G GRAVITYMASTER「GPW-2000」が発表された。
同社の時計用完全新作モジュールの市場投入は、2014年のGPSハイブリッド電波ソーラー以来。新作はこれにスマートフォン経由のインターネット接続機能を追加しており、今後のカシオウオッチの多機能化と自動化を加速するキーデバイスとなりそうだ。
「完全自動化された腕時計」に限りなく近付いた
新作モジュールの名称は「Connected エンジン 3-way」。時計用標準電波、GPS、インターネット上のタイムサーバーという3つの手段から、時刻取得を自動取得できることに由来する。
カシオはこれをG-SHOCKのMASTER OF G GRAVITYMASTERシリーズ「GPW-2000」(5月19日発売、税別価格10万円)に搭載、その後は同社の全ブランドに搭載機をラインナップしていく考えだ。なお、「Connected エンジン 3-way」と「GPW-2000」の詳細については、別記事にてご確認いただきたい(以下の写真はクリック/タップすると拡大表示)。
会場では、カシオ計算機 取締役執行役員 時計事業部長の増田裕一氏が登壇。Connected エンジン 3-wayのコンセプトについて解説した。
カシオは2017年1月に米ラスベガスで開催されたCES 2017にて、「CASIO CONNECTED(カシオ コネクテッド)」をスローガンとして掲げたが、これについて増田氏は「これからも時計もインターネットにつながって、お客様の利用価値を高めていくという宣言」と解説。スマートウオッチやフィットネスウオッチなど、時計が多様化・多機能化していく中で、「カシオはさらなる精度を追求し、その先へ進化させていく」とした。
また、1974年、カシオ時計事業の初号機として登場した世界初の自動カレンダー搭載デジタル時計「カシオトロン」を振り返り、「電卓戦争を勝ち抜く中で培ってきたデジタル技術で『完全に自動化された腕時計』を作るのが当時の技術者の目標だった。しかし、それは今まで実現できなかった」と吐露した。
充電を自動化したソーラー仕様、時刻修正を自動化した電波時計、その両方を備えた電波ソーラー、そして、人工衛星から場所と時刻を取得するGPS時計……。少しずつ自動化に近付きながらも、理想にもう一歩届かない。その原因は、増田氏いわく「サマータイムとタイムゾーンの存在にあった」。
世界にはサマータイムを実施している国や地域があり、実施の有無は政策によって変わる。時差に影響するタイムゾーンも変更されることがあるのだ。
「実際、2016年はトルコやアゼルバイジャンがサマータイムを廃止しましたし、ロシアではタイムゾーンが変わりました。Connected エンジン 3-wayでは、これらの問題を解決する仕組みとして、インターネットから最新の時刻ルールを取得するという方法を採用したのです」(増田氏)。
カシオは、世界中のサマータイムやタイムゾーンを、クラウド「Accurate Time System」(アキュレイトタイムシステム)で管理している。
そこでConnected エンジン 3-wayは、スマートフォン経由でインターネットにアクセスして、専用アプリがAccurate Time Systemから時刻の最新情報を取得、時計内部の時刻ルールを更新するという。これにより、時計が持つ時刻ルールが常に最新のものとなり、サマータイムをまたぐ日程での海外旅行や出張でも、時刻や地域の切り替えが一切不要となる。
インターネットから時刻ルールが自動更新されるので、ユーザーは最新ルールの時計を常に手にできる |
日本国内は標準電波、世界ではGPS、時刻ルールのアップデートにはインターネットと、3WAYのアクセス手段を持つ |
時計とスマートフォンの最初の接続のみユーザー操作が必要だが、一度接続してしまえば、Bluetoothでつながっている限り、その後の操作は一切不要。まさに、腕時計の「完全自動化」がようやく完成に至ったといえるのではないだろうか。
ところが「私はそうは思っていません」と増田氏。「現在はスマートフォン(と専用アプリ)を介してインターネットに接続していますが、将来的にはWi-Fiなどで『時計が直接ネットとつながっていく』。こういう時代が必ず来ます。その時こそ、このシステムが時計のデファクトスタンダード(事実上の標準)になると固く信じています」(増田氏)