海洋研究開発機構(JAMSTEC)などは2月2日、日本海溝沖の北西太平洋に存在するプチスポットと呼ばれる火山のマグマが、プレート直下のアセノスフェアに由来することを明らかにしたと発表した。
同成果は、海洋研究開発機構海底資源研究開発センター 町田嗣樹特任技術研究員、京都大学大学院人間・環境学研究科 小木曽哲教授、東北大学東北アジア研究センター 平野直人准教授らの研究グループによるもので、2月2日付けの英国科学誌「Nature Communications」に掲載された。
アセノスフェアとは、地殻の下のマントル内に存在する、地震波の伝わる速度が低下した柔らかい層のこと。プレート直下のアセノスフェアが柔らかい理由について、部分的に溶けていることが原因であるとする説と、溶けてはいないとする説が提唱されており、プレートテクトニクス理論が確立されたころから論争が続いていた。その後、アセノスフェアに二酸化炭素を大量に含むマグマが存在している可能性が提唱されているが、そのことを示す物的証拠はこれまでなかった。
一方、日本近海で発見されたプチスポットの形成モデルによると、プチスポットマグマの上昇はプレート沈み込みに伴うプレートの屈曲に深く関わっており、マグマの供給源はプレートの下のアセノスフェアだろうと予想されている。さらに、プチスポットマグマには二酸化炭素が大量に含まれているという。今回、同研究グループは、二酸化炭素に富むプチスポットマグマが実際にはどこで生成されたのかを決定するために、複数相飽和実験と呼ばれる高温高圧溶融実験を行った。
この結果、マグマと共存していた鉱物はかんらん石と斜方輝石であったことが判明し、プチスポットのマグマが噴火前にプレート下部でマントルかんらん岩と共存していたことが示された。かんらん石と斜方輝石はプレート下部を構成するマントルかんらん岩に含まれる代表的な鉱物だが、実験から求められた温度圧力条件が、プチスポットマグマがプレート下部ではなく、プレート直下のアセノスフェアに由来することの証拠となっている。
また、アセノスフェアは二酸化炭素の存在によって部分的に溶けており、そのマグマがプレートの屈曲に伴ってプレート下部に貫入し、周囲のマントルかんらん岩と化学的に安定に共存する状態に達し、その後噴火したものがプチスポットであることがわかった。
同研究グループは、今回の成果について、アセノスフェア部分溶融説を強く支持するものであり、地球のプレート運動、さらにはプレート運動によって引き起こされるマントル対流の仕組みを根本的に理解するための重要な条件となると説明している。