鴻海精密工業の傘下で再建を進めているシャープが、戴正呉社長のもとで、改革に乗り出している。
2016年8月12日の買収完了以降、堺への本社移転、合弁解消などによる子会社の再編、集中購買の促進、有機ELディスプレイのパイロットラインへの投資などのほか、信賞必罰型人事制度の導入や、ローテーション制度の廃止、45歳以下を対象にした退職した社員のカムバック制度の導入といったように人事面にもメスを入れている。そして、2016年度下期の黒字化、2018年度までの東証一部復帰などの方針を打ち出す一方、新たなスローガンとして「Be Original.」を掲げるなど、矢継ぎ早に手を打っている。
そのなかで、戴社長が打ち出したのが、欧米のテレビ事業などにおけるライセンスビジネスの再編だ。
シャープの戴社長は、「シャープのブランドライセンスを世界中から買い戻したい」と語る。実際、2016年12月22日には、工場を売却するとともに、ブランド供与を開始していたUMCを、逆に買収することを発表。ブランドを買い戻すだけでなく、子会社化するという動きに打って出た。
シャープのライセンスビジネス
シャープは、鴻海傘下に入る以前に実行していた自主再建において、海外の一部事業の、事実上の事業撤退を決断。ブランドライセンスビジネスへと移行していた。
具体的には、欧州においては、テレビ生産から撤退し、ポーランドの生産拠点をスロバキアのUMCに売却。UMCにシャープブランドを供与し、液晶テレビを販売する体制へとシフト。また、白物家電は、トルコのVestelに販売を移管。タイや上海のシャープの工場で生産したシャープブランドの白物家電を、欧州で販売しているほか、Vestelが生産した家電もシャープブランドで販売している。米国においては、中国のハイセンス(海信集団)に、メキシコのテレビ工場を売却。同社にシャープブランドを供与するビジネスにシフトしていた。
当時シャープの社長を務めていた高橋興三氏は、「欧州市場は国ごとにニーズが異なる市場性に対応できなかったことに加え、シャープの販売シェアが小さいため、開発コストに見合う販売量を確保できずに赤字が続いていた。欧州市場からの生産撤退により、テレビ事業の最大の赤字が消えることになる」などと、ライセンスビジネスにシフトした狙いを説明していた。