どこかで見覚えのあるMarvell「88SS1074」とTLC NANDの組み合わせ

では製品サンプルとして入手したWD Blue 1TBモデル「WDS100T1B0A」を例に、内部の構成を確認していこう。なお、500GBモデルや250GBモデルではチップの枚数や容量などは異なるはずだが、基本的な構成は同じとみられる。

WD Blue SSDは、紙パッケージにプラケース、中身はSSDのみとシンプルだ。データ移行には別途ソフトウェアを入手する必要がある

WDS100T1B0Aのケースは、4つのネジで分解できるが、シールによって隠されているので、基本的にユーザーが分解することはやめておくのがよい。今回はレビューということで分解していく。構成部品は、表面カバー、底面カバー、基板の3点だ。底面カバー部分は金属製、表面カバーは樹脂製を使い分けている。

基板上を見ると、全チップをカバーする形で熱伝導シートが貼られており、これを介して金属製の上部カバーから放熱される。放熱効果はまずまずよさそうだが、全面金属製というわけではないので、軽量であるしコストとのバランスもとられた設計であるように見える。なお、コスト重視のモデルでは、ネジを使わずツメで固定するのが最近のトレンドで、そのカバーも全面樹脂製であることも多いから、それよりも上のセグメントの製品であることは間違いない。

表面カバーは樹脂製

裏面カバーは金属製でほぼ全面にわたって熱伝導シートが貼られている

基板上の各部品を見ていくと、まずコントローラはMarvellの「88SS1074」が採用されていた。88SS1074は、MLC/TLCおよび3D NANDチップをサポートするコントローラで、比較的新しい。

基板表面の実装

基板裏面には何も実装されていない

コントローラチップはMarvell「88SS1074」

NANDフラッシュメモリチップは、SanDisk刻印の「05478 128G」が採用されていた。SanDisk刻印ということは、SanDiskと東芝の合弁による四日市工場で製造されたチップということだ。チップは合計8枚が表面に実装される形で、128GB×8枚=1024GB=1TBを実現している。なお、NANDセルの技術としてはTLCを採用している。

現行セル技術では、1セルに2値を記録できるMLCと、3値を記録できるTLCがある。TLCは記録密度を高める点で有効な一方、セルレベルで見れば書き換え寿命の点でMLCに劣る。しかし、近年の書き換え寿命の延命技術(ファームウェアなどによるウェアレベリングなどの技術)によって、SSDのパッケージレベルでは製品保証期間を十分に全うできるだけの寿命を実現している。ここは先のスペック紹介において、TBWの部分で説明したとおりである。

NANDフラッシュメモリチップはSanDisk「05478 128G」。8枚で1TBを構成

コントローラとNANDの組み合わせを見ると、これはおよそSanDiskのX400 SSDに相当するということが分かる。ただし、両者を比較すると、例えばX400 SSDにはSanDiskのnCache 2.0が搭載されているのだが、WD Blue SSDにはこれに相当するキャッシュ技術が搭載されているという記述がない。ただし、うたっていないだけで同様の技術が実装されているということはあり得るだろう。

ちなみに、製造にはSanDiskのラインを用いていると考えられる。基板上にもSanDiskのロゴが確認できるからだ。そもそも先日行われた発表会で説明を行った米WDのデバイスグループ マーケティングコミュニケーションディレクター Laurie Iwami氏がSanDisk出身の方というくらいなので、WDのグループ内で各ブランドがシームレスに連携していることの現れと捉えるのがよいだろう。

キャッシュメモリはMicron製のMT41K512M8RG-107:N「D9RCX」が2枚実装されていた。これは4Gbitで駆動電圧1.35VのDDR3L-1866メモリだ。実際の駆動周波数は分からないが、容量は2枚で1GBとなる。容量面から見て、十分なスペックと言えるだろう。

キャッシュメモリはMicron「D9RCX」を採用。2枚で1GBの構成