セルラーによる通信 - 継続的な革新がスマートメーターを産業向けIoTに変える

これまでメーターシステムには、電力線通信(PLC)や各社独自の通信規格、ライセンスの不要なRF帯を使用する無線技術が使用されてきましたが、近年、新しく批准されたセルラー規格が世界的に注目を集めつつあります。

これは各政府がオープンな仕様に基づく技術の使用を義務付けた結果です。事業者も既存のセルラー網を活用することで、大規模に展開する際の総所有コスト(TCO)を削減したいと考えるようになってきています。実際に、独自ネットワークの設計と展開に新たな投資を行わないことで、設備投資(CAPEX)と運用費(OPEX)を削減することができます。これにより、事業者は、プライベート・ネットワークを独自に設計・設置し、その運用や保守にリソースを割く必要がなくなり、中核事業に集中することができます。

オープンなセルラー規格は、特に複数のサービスを提供する事業者に対し、相互運用性、カバレッジエリア、データ通信量、その他の分野で付加価値をもたらします。たとえば、AMIのプラットフォームは、電気・ガス・水道といった複数のメーターシステムを運用する事業者によって利活用されます。また、ゴミの回収、スマートパーキング、都市の環境監視など、自治体で採用されている自動遠隔監視システムとスマートメーターを複数組み合わせる場合にも、同じことが言えます。

このような事案では、独自の無線技術を選択することは、エンジニアに困難を課すことになります。一方で、セルラー通信を採用する場合は、その規格がオープンな仕様に基づくため、スマートメーター機器各種や複数のOEMメーカー間で相互運用性が担保されるという本質的なメリットがあります。したがって、セルラー技術は、ネットワーク設計における複雑な手間の軽減につながり、無線信号の衝突や干渉の回避によるサービス品質を確保するのに有効です。

スマートメーターを設計する上でもう1つ重要なのはセキュリティです。事業者が独自の複雑なネットワークを長期にわたって運用しなくてはならない点を考慮すると、日々進化・多様化していくサイバー攻撃に対応できる、柔軟なセキュリティ対策が求められます。

「どんなシステムも完全に安全だなんて信じない」。1983年のSF映画「ウォー・ゲーム(WarGames)」で主人公が述べたセリフです。これはもはや、SF小説や映画の中だけの話ではありません。今後何百万台ものスマートメーターが導入されて、運用開始から10年、15年以上が経った時、スマートメーターがハッキングされるという最悪の状況を想像することは難しくありません。故障やスマートメーターのファームウェアに対する悪意のある攻撃は、何百万台もの機器を同時にダウンさせ、広範囲にわたって、全国の供給網に大規模な被害を引き起こす可能性があります。

したがって、AMIでは長期にわたってセキュリティを保証する必要があり、そのために、スマートメーター機器ではファームウェア(スマートメーターを制御する組み込みソフトウェア)の無線アップデート(Over-the-air:OTA)ができる事が必須です。ファームウェアが壊れた場合や、安全でなくなった場合は、新しいファームウェアをワイヤレス接続で送信できる必要があります。ワイヤレス接続により、エンジニアを現場に派遣する必要はなくなります。

真のスマートメーターを実現するためにはセキュリティを担保する必要がある

エンジニアの派遣はメンテナンスコストの増大につながるだけでなく、セキュリティ侵害が起こり、数百万台のメーターのアップデートが必要な場合は対応が追い付かず、現実的ではありません。

低帯域幅を利用する省電力無線ネットワークのほとんどは、1日に数百バイトの情報をそれぞれの機器に送信できる程度のダウンリンクレートしか持ち合わせていないので、OTAによるファームウェア・アップグレードは困難です。