Firefoxの特徴の1つは、オープンソースであることだ。そのソースコードがすべて公開されており、誰でも自由に扱うことができる。そんな背景から生まれたのが、独自ビルドブラウザ。Firefoxのソースコードをベースに、機能拡張などを行ったブラウザである。

Firefox 41以前では、Windows版は32bit版のみで64bit版はリリースされていなかった(ベータ時点では存在するが、正式版ではなくなっていた)。そんなこともあり、独自に64bit版を提供することが多かった。しかし、本家のFirefoxがWindows版の64bit版を提供するようになり、あえて独自ビルドブラウザを使うメリットが減少し、勢いを失う。また、個人ベースでの開発なので、Firefoxの高速リリースについていけないといったこともあり、残念ながら、それほど普及していないのが現状である。

今回、紹介するPale Moonも、最初は64bit版を同時リリースしていることが注目された。その後であるが、2016年11月22日にバージョン27がリリースされた。本稿では、インストールや日本語化などの方法について紹介したい。

Pale Moon

Pale Moonとは

最初に、Pale Moonの流れを振り返ってみよう。最初のリリースは、2009年10月である。この時点で、64bit版が存在した。当時は、メモリ消費を抑え、高速化を目標としていた。その方法であるが、Firefoxはマルチプラットフォーム(LinuxやMac OSにも対応)であるのに対し、Windows専用ブラウザとしたことだ。Windows専用であるため、Firefoxが使用しないCPUの拡張命令を使うことができた。

Pale Moonにとって大きな転機となったのは、2014年4月、Firefox 29で採用されたAustralisを採用しなかったことであろう。Australisについては、当時も否定的な意見が少なからず存在していた。そんなユーザーにとって、Pale Moonは解決策の1つでもあった。

2016年1月(Pale Moon 26)には、レンダリングエンジンにGoannaを採用した。Goannaは、Geckoからフォークしたエンジンである。Geckoよりもメモリ消費が少なく、シングルプロセスの採用により、起動が高速である。一方で、HTML5の対応レベルを評価するHTML5testの点数は、Firefoxと比較すると低い(2016年11月時点)。

また、Australisを採用しなかったことにより、Firefoxで動作しなくなったアドオンが、Pale Moonに移動した。また、Pale Moonでは、独自のアドオンも採用された。Firefoxでは、今後、アドオンはWebExtensionsベースに移行される(2017年11月リリースのFirefox 57での予定)。古いアドオンを使うユーザーには、朗報となる可能性もある。