なぜ1ポイント=1円の壁を超えたのか

今回の発表では、WALLETポイントをモノなどに交換できる「au STARギフトセレクション」が目玉といえるだろう。サッカー日本代表の一日体験ツアーといった体験価値の提供も目新しいが、ポイントの交換対象としてauが厳選したモノに注目したい。実はこの商品群、ポイントの点数よりも市価の方が高く、概ねではあるが1ポイント=1.5円相当前後になる。

10000ポイントの対象商品

20000ポイントの対象商品

30000ポイントの対象商品

従来、ポイント制度などで市価よりも安く設定されている場合などは、メーカー側が嫌がるものなのだが、KDDIでau STARプログラムを担当するコンシューママーケティング2部の水野香氏は「商品を提供しているメーカーの努力であったり、KDDI側の負担なども含まれる」と説明しており、かなり無理を通して実現しているとのこと。長期利用ユーザーへの「利益還元」というにふさわしい努力が払われているようだ。

とはいえ、1円=1ポイントを超えるというのはポイント制度的には画期的だとはいっても、対象はau STARギフトセレクションだけであり、その他のサービスでは1円=1ポイントにとどまっている、au WALLETはポイント還元の機会が基本的に自社サービス利用時というクローズドな環境で、還元率も全体的に低いなど、他のポイントよりも貯まりにくい印象がある。ギフトにいい商品が並んでいても、現実的に入手できる気が起きないのだ。

還元率のアップやポイントの提携は?

どうせなら通信費だけでなく、全体に還元率を上げたり、あるいは別のポイントサービスとの相互ポイント交換といった方向には行けなかったものだろうか。発表会場でもメディア各社からの質問は相互交換の計画などに集中した。

この点について、前述した水野香氏は課題であることは認めつつも「貯まる率が悪いのではなく、見せ方の工夫が足りていないという認識」だという。実際、KDDIの田中社長は11月1日に開催された決算会見で、既存ユーザーへの還元強化を宣言。KDDIとしては今後ポイント還元に大きな予算を割いていく予定であり、au STARなどを通じた還元額は2016年度下期で100億円規模、2017年度は数百億円規模の予算が組まれているという。こうした予算が利用してギフト商品の質の底上げにつながっているわけだ。

では、なぜ他サービスとの提携は行われないのか。これについてKDDIでは「サービスの継続性」を理由に挙げている。たとえばドコモはdポイントとローソンのPontaポイントと相互交換を実施しているが、コスト的にはかなりロスが大きいのではないかと分析している。

損失は自社で補わねばならないが、規模が大きくなっていくと原資的に限界がある。提携先サービスと持ちつ持たれつな関係になれればいいが、一方的にポイントを吸収されるような関係になってしまうことは避けたい。ならば、対外的な関係の影響力が高いポイントよりも、自社で制御しやすいプレゼント商品を値引きしたほうがより安定もするし、実現もしやすいということだろう。その場限りの花火ではなく、きちんと長期間での展開を考えているところは好感が持てる。