ネットギアジャパンは11月17日、家庭内のスペースを網羅して高速Wi-Fi環境を実現する、世界初(同社調べ)のトライバンドホームWi-Fiシステム「Orbi」(オービ)を発表した。Orbiは従来の無線LANルータ+中継機の組み合わせで発生するボトルネックや、ネットワークの瞬断・遅延を解消するWi-Fiシステム製品だ。
12月22日から発売し、価格は45,800円(税別)。2016年11月17日~同年12月22日の期間、Amazon.co.jpで先行予約を受け付ける。さらに、2016年12月15日までにAmazon.co.jpで予約すると、割引クーポンを使って5,000円引きの40,800円で購入できる。
起業から20年の歴史を数えるNETGEARは、時代の変化や流行に合わせて各種製品を市場に投入してきた。米国においてはWi-Fiネットワークカテゴリーで46%のシェアを持ち、エンタープライズ領域からコンシューマまでを対象にしたストレージ製品や、ネットワーク製品を取りそろえている。近年はNighthawkシリーズを3つの周波数帯域による通信に対応する"トライバンド化"し、競合他社と衝突しないプレミアムルータ市場を開拓してきた。NETGEAR Sr. Director Product Management Sandeep Harpalani氏は「802.11ac対応無線LANルータや、トライバンド無線LANルータを最初に発売し、Wi-Fiエクステンダ(中継機)という市場も開拓した」とアピールする。
そのHarpalani氏は、米BI Intelligenceの調査結果をもとに、家庭内のデバイス数は平均11台で、2019年までには2倍に増加すると予測した。「IoT時代を迎えた現在、これらの数字は驚くに値しない。(この潮流に合わせてネットワークデバイスベンダーは)従来と変わらないサービス提供が課題」(Harpalani氏)とし、その回答となるのが「Orbi」だ。
ネットギアジャパン マーケティング 曽利雅樹氏によれば、既存の無線LANルータ+中継機という組み合わせは、いくつかの課題を抱えているとのこと。利用者が室内を移動した場合、中継機のサポート領域に移動しても、スマートフォンなどネットワークデバイスの移動を判別できないため、ネットワーク接続は一度遮断し、中継機側のネットワークへ再接続しなければならない。さらに、無線LANルータと中継機をつなぐネットワークバンドが子機デバイスと同じため、接続するデバイスの増加によってネットワークスピードの低下が発生する。これらの諸問題を解決するのが「Orbi」だ。
Orbiは、有線LANポート(10/100/1000Mbps)×3やWAN×1、ルータ機能を備える「Orbiルータ」と、有線LANポート×4を備える「Orbiサテライト」の組み合わせで使用する(単独利用も可能)。共通する仕様として、IEEE802.11ac/a/b/g/n(1.733Mbps+866Mbps+400Mbps)の規格に準拠し、2.4GHz/5GHzはともに256QAM(Quadrature Amplitude Modulation)をサポート。Wi-Fi用アンテナは6本を内蔵している。
また、従来製品でも採用していた無線LAN子機・中継機などから送られる位置情報をもとに電波を飛ばすエクスプリシット・ビームフォーミングや、ルータ側が自動的に無線LAN子機・中継機などの位置を判断して電波を強く飛ばすインプリシット・ビームフォーミングもサポート。さらに、電波干渉が起きないよう位相をずらして複数の信号波を送信し、空間多重化によって複数デバイスの同時通信を可能にするMU-MIMO(Multi User MIMO)にも対応する。
従来の無線LANルータ+中継機と大きく異なるのが、中継用のネットワーク帯域を専用に設けている点だ。OrbiルータとOrbiサテライト間はトライバンドの1つ、5GHz(1.5Gbps)で接続し、残る2つのバンドはスマートフォンなどのネットワークデバイス用に残している。この仕組みは"仮想的な有線LAN"をイメージすると分かりやすい。その結果、利用者のネットワークデバイスが増加しても、パフォーマンスダウンは基本的に発生しない。また、1つのSSIDで全体をカバーするため、利用者はアクセスポイントの場所を気にせず利用できる。
NETGEARが行ったベンチマークによれば、従来の無線LANルータ+中継機とOrbiを比較したところ、接続デバイスが1台の場合は2倍ほどOrbiが高速、デバイスが3台に増加した場合はOrbiが約3倍のネットワークスピードを計測したという。ネットギアジャパンのオフィスでも802.11ac対応スマートフォンを使って計測したところ、Orbiルータを設置した会議室は約404Mbps、Orbiサテライトを設置したオフィスでは約358Mbps、ルータからもっとも離れた場所でも約328Mbpsという数字に。
ネットギアジャパンのオフィスは金属製の壁が多いため、一般家庭よりは悪環境だが、それでも結果につながった。また、今回の発表会では、異なるネットワーク同士でインターネットにつながったデバイスでSkype通話を行い、家庭内を移動した際の再接続を行うデモンストレーションを披露。Orbiサテライトの電源を強制遮断し、会場後方にあるOribルータに再接続(ビデオ通話が復活)するまでの時間は約8秒だった。「家庭内でお使いの場合、OribルータからOribサテライト(もしくはその逆)に接続する場合は途切れない」(曽利氏)。Oribは平均371平方メートル(約112坪)をカバーする。
Oribサテライトは、状態がひと目で分かるリングLEDを備えている。赤紫色が点灯する場合はOribルータと接続していない状態を示し、橙色が点灯すると接続済みだが互いの距離が遠くてベストパフォーマンスを引き出せない状態。そして青色が点灯すると接続状態が良好であることを示す。リングLEDは5分後に自動消灯する。
OribルータおよびOribサテライトはペアリングされた状態で出荷され、「箱から取り出して、ISPのPPPoE設定などを行うだけで利用可能」(曽利氏)と、手軽さを強調した。ちなみに、OribルータやOribサテライトの単独販売も予定しており、Oribサテライトは最大3台まで接続可能だ。今後のファームウェア更新によって、その数は増加する可能性がある。
欧米とは異なり、日本は比較的コンパクトな住宅が多いため、過大なシステムのように見える。だが、曽利氏によれば日本市場では中継機の売れ行きが好調だという。コンパクトな住宅でもデッドスポットが発生してしまうのは、我々利用者がもっとも実感している場面かもしれない。現在、無線LANネットワーク環境に不便を感じているなら、Oribによって大きく改善する可能性があるだろう。
阿久津良和(Cactus)