2016年11月9日(米国時間)、MicrosoftはWindows 10 Insider Preview ビルド14965を、ファーストリングを選択したPCとモバイル向けにリリースした。タブレットから外部ディスプレイのコントロールを可能にする機能を追加し、付箋紙やWindows Inkワークスペースの改善や、前ビルドで加わったHyper-V仮想マシンのスケーリング操作に伴う変更が加わっている。

"Windows 10の日"に登場した新ビルド

奇しくも日本時間の10月10日は、日本マイクロソフトがWindows 10を訴求するために定めた"Windows 10の日"である。もちろんWindows 10 Insider Previewは内部開発したCanaryリングで問題が確認されなければ、毎週Fastリング向けに最新ビルドを公開しているため、単なる偶然だ。OSビルド14965は、Windows 10 Creators Updateで実装する予定の新機能も備わっていないものの、タブレットから外部ディスプレイを制御する仮想タッチパッドなど、気になる新機能もある。

Microsoft Windows and Devices GroupソフトウェアエンジニアのDona Sarkar氏は、タブレットに接続した外部ディスプレイのコンテンツに対して、マウス接続なしにアクセス可能になると説明している。一見するとよく分からないが、これは直近のWindows 10 Insider Previewに追加してきた高精度タッチパッドにまつわるカスタマイズの1つだ。

タスクバーに加わった<Show touchpad button>ボタンを有効にしてからクリックすると、仮想タッチパッドがデスクトップ上に現れ、接続した外部ディスプレイに対する操作が可能になる。例えば2-in-1 PCとディスプレイアダプターをMiracast接続したディスプレイを仮想タッチパッド経由で操作し、プレゼンテーション中にキーボードをデタッチした際の利便性を向上させる目的で追加したと推察できる。ちょうど、Windows 10 MobileデバイスでContinuum for Phoneを利用し、同デバイスをタッチパッド代わりに使う操作感覚を思い出すと分かりやすいだろう。

タスクバーのコンテキストメニューに加わった<Show touchpad button>。こちらにチェックを入れると、タスクバーにボタンが並ぶ

touchpadボタンをクリックすると、仮想タッチパッドがデスクトップに現れる

さらにOSビルド14959では、「Stick Notes(付箋紙)」をバージョン1.2.9.0へ更新し、これまで英語環境に留まっていたフライト情報の検出を日本語などにも拡大した。これはStick Notesに書き込まれたフライト情報や電話番号、日時によるリマインダー設定をCortanaが検出し、適切な情報として提示するというものだ。日本語ではフライト情報に加えて株価情報をサポートし、電話番号や住所、メールとURLは未対応と説明しているが、筆者のペン操作がマズイのか、旅客機のフライト情報も株価も検出しなかった。こちらキーボードから入力しても結果は同じだったことを付け加えておく。Stick Notesは、この他にも[Ctrl]+[Z]/[Ctrl]+[Y]キーのサポートや、テキスト入力時のパフォーマンス向上など、UI・UXの改善が加わっている。

筆者の環境ではバージョン1.2.10.0が配信されていた。自動検出機能を利用するには<インサイトを有効にする>のスイッチをオンにする

Windows Inkワークスペースにもいくつかの改善が加わった。直近利用したアプリケーションが並ぶ「最近使用したもの」は6アイテムに拡大し、スケッチパッドのパフォーマンス向上、分度器の更新のようにUI・UXの改善を進めている。個人的に興味深いのが、「レジストリエディター」。こちらはOSビルド14959での改善ではないものの、Microsoftはアドレスバーを使ったショートカットキーや、ルートキーの省略表記について説明している。エクスプローラーなど他のアプリケーションと同じく、[Alt]+[D]キーでアドレスバーをフォーカスし、[Alt]+[L]キーでも同じアクションを実行できるという。また、HKEY_CLASSES_ROOTキーを「HKCR」、HKEY_CURRENT_USERキーを「HKCU」といったreg.exeと同じ省略表記を使えるため、よりスピーディにレジストリエントリーの編集が行える。前ビルドであるOSビルド14959から、Hyper-V仮想マシンのズームレベル機能が加わったが、新たにズームレベルの保持と、タスクバーをデスクトップ上部に配置しつつ最大化表示した場合のタイトルバーが表示されなかった問題が修正された。

「最近使用したもの」が6つまで増えたWindows Inkワークスペース。その他にもバグフィックスやパフォーマンス向上も加わった

新機能ではないが「レジストリエディター」でも、[Alt]+[D]キーでアドレスバーを選択できるのは便利だ

ちなみにOSビルド14959のWindows 10 Mobile Insider Previewには、「Unified Update Platform(UUP)」が加わった。詳しくは前回の記事をご覧頂きたいが、今回同じタイミングで、デスクトップPC、2-in-1 PC、Windows 10 Mobileと3台のデバイスをOSビルド14965へ更新したが、最初に完了したのはWindows 10 Mobileだった。時間を計測していないものの、体感的にはデスクトップPCの半分程度。UUPによって更新に要する時間が大幅に短縮されたことを確認できた。UUPのPC向け実装についてMicrosoftは今年後半とアナウンスしているが、このタイミングを踏まえると12月頃にリリースされるWindows 10 Insider Previewでは、その恩恵にあずかれることだろう。

OSビルド14965の改善点・既知の問題

ここからはPC版とモバイル版の修正内容と既知の問題を紹介する。まずはPC版の修正箇所から。

  • Internet Explorer 11を起動し数秒後にクラッシュする問題を修正した。
  • フランス語(フランス or カナダ)でCortanaを使用時に写真や動画などを検索する際、Bing検索ではなく「カメラ」が起動する問題を修正した。
  • PCゲームをフルスクリーンでプレイ時に、[Win]+[L]キーで画面ロックするとグラフィックが正しく描画されなかった問題を修正した。
  • [Alt]+[F4]キーでシャットダウンを実行するダイアログのDPIを変更した。
  • エクスプローラーでネットワーク上の共有フォルダーを変更するとクラッシュする可能性がある問題を修正した。
  • スタートメニューにピン留めした「Outlookカレンダー」のテキストがぼやけている問題を修正した。
  • 削除したファイルが0バイトのサイズを持つファイルとして残るエクスプローラーの問題を修正した。
  • サインイン後にデフォルトのロック画面が希(まれ)に現れる問題を修正した。
  • 「タスクマネージャー」でアプリケーション名を右クリックすると現れるコンテキストメニューから、<ファイルの場所を開く>を選択するとエクスプローラーがクラッシュする問題を修正した。
  • OSビルド 14965からUAC設定やスタートアップフォルダーに登録したショートカットファイル、エクスプローラーのクイックアクセスにピン留めした各種情報をアップグレード時に保持するように変更した。
  • 「Grooveミュージック」のリスト管理を見直すことで、予期せぬ描画が発生していた問題を修正した。
  • Cortanaでリマインダー作成を提案され、そのまま予定を作成するとクラッシュする問題を修正した。
  • Microsoft Edgeでファイルのダウンロードをキャンセルしても、プログレスバーが取り除かれなくなる問題を修正した。
  • Office 2016や一部のテキストエディターで日本語用MS-IME利用時に、デスクトップの左上隅に入力ボックスが現れる問題を修正した。

続いてモバイル版の修正箇所を紹介する。

  • フランス語(フランス or カナダ)でCortanaを使用時に写真や動画などを検索する際、Bing検索ではなく「カメラ」が起動する問題を修正した。
  • Cortanaでリマインダー作成を提案され、そのまま予定を作成するとクラッシュする問題を修正した。
  • 英語(インド)使用時のテキスト入力予測のパフォーマンスを改善した。
  • 「データ使用状況」でデータプランを制限せずと表示制限が変わらなかった問題を修正した。
  • ポーランド語で使用する場合、デュアルSIMに関する設定項目が正しく表示されなかった問題を修正した。
  • 新ビルドに更新した後、Microsoft Edgeの起動に失敗する問題を修正した。

次はPC版で確認された既知の問題を紹介する。

  • Excelワークシートファイルを関連付けから起動すると、エクスプローラーがクラッシュする問題を確認済み。これを回避するにはExcelからファイルを選択する。
  • Microsoft Studioのゲーム(マインスイーパーなど)が起動時のスプラッシュ画面でフリーズする問題を確認している。

最後にモバイル版の既知の問題を紹介する。

  • OSビルド14951、もしくはOSビルド14955に"日付変更"でアップデートする方法は使用しないでほしい。Microsoftアカウントチケットを期限切れにすることで配信される。
  • これから数週間の間、Windows 10 Mobileの言語やキーボードをインストールすることはできない。必要であればWDR(Windows Device Recovery)ツールを使って初期状態から任意の言語やキーボードを選択する。

前回の記事でも述べたように、13日(現地時間)までWindows 10 Insider Previewのバグを洗い出す「November 2016 Bug Bash」を開催中だ。興味のお持ちの方は「フィードバックHub」を起動し、クエストからMicrosoftが提示した内容が正しく動作するか確認することから始めてみることをお薦めする。

「インサイダーHub」を起動すると、Bug Bashを元にした多くのクエストが並ぶ

阿久津良和(Cactus)

前回の記事はこちら
・Windows 10 Insider Previewを試す(第72回) - UUPで配信データ量を軽減するOSビルド14959登場
http://news.mynavi.jp/articles/2016/11/04/windows10/
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Windows 10 すべてがわかる特集記事はこちら
【特集】~インストールから設定・活用まで~ すべてが分かるWindows 10大百科
http://news.mynavi.jp/special/2015/windows10/