それでも「MONO」を展開した理由とは?
しかしながら一方で、NTTドコモは冬・春商戦に向けて、低価格のスマートフォンシリーズ「MONO」を展開しているほか、LTE対応フィーチャーフォン向けに、月額1,800円から利用できる料金プランを提供するなど、低価格指向のユーザーに向けた施策も打ち出している。これは低価格を求める層をMVNOに移行させまいとする動きにも見える。
だが実際のところ、MONOなど今回NTTドコモが打ち出した一連の施策は、ワイモバイルやUQ mobileへの対抗と考えられそうだ。MVNOは確かに価格は安いが、規模が小さい企業が大半を占めるため、ブランド力や信頼、安心感という面では劣る部分がある。実際ワイモバイルやUQ mobileのように全国くまなく実店舗展開できている、あるいはしようとしているMVNOは極めてごく少数にとどまり、大半のMVNOは買いやすさやサポートなどの面で、今なお多くの課題を抱えている。
もちろん、インターネットイニシアティブ(IIJ)のように日本郵政とタッグを組み、郵便局のカタログ販売を活用するなどして販路を拡大するMVNOや、楽天の「楽天モバイル」のように、企業体力があることを活用し、テレビCM展開や独自の端末調達などでブランド力を高めているMVNOなどは出てきている。だがそれでもまだ、大手キャリアの後ろ盾がある2つのブランドと比べると力不足という印象は否めない。
それだけにNTTドコモとしては、現在MVNOに欠けている安心・信頼・ブランド力という部分をカバーし、ワイモバイルやUQ mobileに流出しようとしてるユーザーを阻止するためにも、低価格の端末やサービスを提供するに至ったといえそうだ。特にワイモバイルやUQ mobileは、価格の高騰を嫌ってスマートフォンへ移行しようとしない、NTTドコモのフィーチャーフォンユーザーを主要ターゲットの1つとしていると見られることから、NTTドコモとしてはMVNOが成長する前に、フィーチャーフォンユーザーがNTTドコモ以外の回線に流出しないよう、対処をする必要があったといえるだろう。
自社やグループ会社の活用に舵を切った2社とは異なり、多数のMVNOに回線を貸すことによって、低価格ユーザー獲得を託したNTTドコモ。その戦略が吉と出るかは、ある意味ワイモバイルやUQ mobileに匹敵する規模にまでMVNOが成長し、NTTドコモが直接介在する必要なく、三つ巴の戦いを繰り広げてくれるかどうかにかかっているといえるかもしれない。