「Uber」を使ったことがある人はいるだろうか? 日本では名前は知っているが使ったことのない人が多いかもしれない。Uberはスマホアプリを使った新世代のタクシーと言えるもので、現在では世界70カ国で展開されているサービスだ。
国内では苦戦のUber
スマホのGPSで自分の位置を知らせると、的確にそこに自動車がやってくる――。Uberはタクシーがつかまりにくい場所にいるときに便利なサービスだ。Uberの運転手はUberの社員というわけではなく、自分の自動車で「サービス」を提供することで、Uberから支払いを受ける。
Uberが提供するのは位置情報、通信情報を統合したサービスであり、それに基づいてUberと契約した自動車オーナーが客をピックアップして目的地に移動させ、客はUberに対してスマホアプリに登録したクレジットカードで支払いをする。
そのため、支払いに関しても現金のやりとりをする必要もなくスマートだ。IT化されたタクシーサービスとも言える。特徴はUberにサービス提供する自動車オーナーも好きなときに働くことができ、自由であるということだ。
客は支払いを終えた後に、ドライバーを評価するシステムになっている。そのおかげで、ドライバーも良い評価を得たくて、良い仕事をするようになるというわけだ。非常に合理的なシステムだ。
このシステムをひっさげ、Uberは世界的にビジネスを展開している。ちなみにUberのCEOは自分がパリを訪れたときに、タクシーを拾うのが非常に難しかったために、このサービスを始めることを思いついたのだという。創業は2009年だ。
さて、このようにスマートなシステムを持つUberが2014年には東京で本格的にサービスを開始したのだが、広くビジネス展開をするのは難しかった。日本においては普通の自家用車で客を移送するサービスが白タク行為とみなされ、国土交通省から指導が入り、自由にビジネスを展開することができなかった。現在は、一部エリアでの営業に限られ、容易にビジネスを拡大できずにいるのだ。
これに対して、Uberが足踏みしている間に同じようにスマホなどで呼ぶことができるサービスが続々と始まっている。たとえば、LINEが2015年1月に「LINE TAXI」というサービスを開始した(LINEは支払いサービスを提供、タクシーは提携会社が提供)。これはGPSでユーザーのいる場所にタクシーがやってきて、目的地まで移動することができるサービスだ。支払いはLINE Payですることができるので、現金で支払う必要がない。まるでUberのような使い勝手で使うことができるわけだ。
また、最近はロボット型携帯電話であるロボホンも自分がいるところにタクシーを呼ぶことができるようになった。これらのサービスはどちらも日本のタクシー会社である「日本交通」と連携したサービスで、日本交通自体もスマホアプリ「全国タクシー」を提供し、スマホでタクシーを呼ぶことができる。さらに、10月にはこのアプリはApple Payに対応するので、支払いに現金を使う必要がない。
LINE TAXIや全国タクシーは日本のどこでも使うことができるサービスであり、エリア制限がされたUberと比較すれば、遙かに大きなビジネスチャンスを持っていることになる。 ドライバー、自動車を持たずに配車システムしか持たない「ライドシェア」のUberのシステムをそのまま日本に持ち込もうとすると、法規制的に不利な状況になってしまうわけだ。さらに基本的な状況として、東京はパリなど外国と比較して、非常にタクシーが拾いやすい街なので、この種のタクシー配車サービスの必要性はあまり高くないので、この国はUberにとって、あまりいい市場ではないかもしれない。