大容量通信のカジュアル化は動画の利用拡大に

新iPhoneの発表に合わせて、ギガモンスターをはじめとした大容量のデータ定額サービスが登場したことは、iPhoneを積極利用する若い世代にとって朗報であることは確かだ。では高速通信容量の大容量化によって、何が大きく変わると考えられるかというと、やはりスマートフォン上で利用するコンテンツやサービスということになる。

特に大きく変わるのは、通信容量が大きい動画に対する意識である。例えば2時間の映画1本を視聴する場合、(画質や内容によって違いはあるが)標準的な画質であればデータ容量は約1.5~2GBとされている。これをストリーミングで視聴する場合、高速通信容量が5GBの場合は2、3本程度しか視聴できないが、20GBの場合は10本以上の視聴が可能になる。映画が10本以上視聴できるとなれば、動画の利用に対するためらいも薄くなり、スマートフォンで動画サービスを利用する人がより拡大する可能性が高まってくるだろう。

ソフトバンクのギガモンスター発表会資料より。5GBの時は高速通信容量を気にして使う人が多かったが、20GBになるとその障壁も取り払われると考えられる

動画を視聴するユーザー層の拡大だけでなく、動画の質や内容の変化にもつながってくる。直近で言えば、最近人気が高まっている360度動画のやり取りがより手軽にやり取りできるようになることでより人気が高まるだろうし、1Gbpsを超える通信速度を実現する、次の世代の通信技術「5G」の時代を見通せば、4K動画のストリーミング視聴も視野に入ってくることは確かだ。

そして大容量通信のカジュアル化は、コミュニケーションの形を大きく変える可能性も秘めている。最近ではテキスト主体のコミュニケーションから、「Instagram」に象徴されるように、写真主体のコミュニケーションへと変化しつつある。

だが高速通信容量が大幅に増えることにより、今度は写真から動画へと、さらにコミュニケーションのスタイルが変化することも、十分考えられるのだ。先に触れた通り、現在でも動画のライブ配信サービスなどが若い世代から人気を獲得しているが、今後はよりパーソナルな形での動画のやり取り、例えばテレビ電話に類するようなサービスが、より広まると考えられそうだ。

もっとも最近では、スマートフォンをそれほど積極的に利用しないユーザー向けに、1~3GB程度と高速通信容量は少ないものの、価格が非常に安いMVNOのサービスも人気が高まってきている。現在はスマートフォンとフィーチャーフォンというハードの違いによってユーザーのモバイルの利用スタイルが分裂してきているが、今後は同じスマートフォンを使いながらも、高速通信容量の違いによって利用スタイルが大きく分裂してくるようなことも起きてくるかもしれない。