7月24日に幕張メッセで行われた国内最大の造形イベント「ワンフェス2016[夏]」。ワコムは、液晶ペンタブレット「Cintiq 27 QHD」やOS搭載型タブレット「Cintiq Companion 2」の体験コーナーを設置し、原型製作ソフト「ZBrush」(ズィーブラシ)とタッグを組んでブースを出展。

ブース内のステージでは、デジタル原型製作で広く使われるソフトウェア「ZBrush」を使用したセミナーやパネルディスカッションなどが開催された。今回は「デジタル原型の先駆者に続け! ZBrushモデラー ディスカッション」と題して行われた、「ZBrush」モデラーによるトークイベントの模様をお届けする。

「ワンフェス2016」で行われたどのセミナーも大盛況

ステージに登場したのは、「ZBrush」モデラーの「Wonderful Works」の榊馨氏、WSC#083“隙間の人”のスキマスキ氏、「アルター」の柳生敏之氏の3名。司会は「3D-GAN」の相馬達也氏が担当。イベントでは「ZBrush」モデラー界の第一線で活躍しているデジタル原型師たちが、伝統的なアナログ作業による原型製作と、デジタル技術の融合、その先に広がる可能性についての意見を熱くぶつけ合った。

左から柳生敏之氏、スキマスキ氏、榊氏

榊氏は自身が書いた「ZBrushフィギュア制作の教科書」を披露

トークはまず、「3Dモデリングとの出会いについて」から。榊氏はもともとイラストを描いており、6、7年前に「ZBrush」を使えばイラストを立体化できるのではないかと思い使い始めたという。また、スキマスキ氏はゲームモデラーとしてゲーム会社に務めていた頃、趣味で「ZBrush」に触れ始めたと話し、柳生氏はこれまでアナログ原型をしており、数年前から「ZBrush」を使い始めたとコメント。きっかけは様々なようだ。

トークは、デジタル原型の制作後に使う機械やサービスについて言及。柳生氏は会社の3Dプリンタ「DWS」(Digital Wax Systems)を使用し、仮出力には低価格の3Dプリンタを使用。スキマスキ氏と榊氏は代行サービス(使用プリンタは「Project HD3500」)を利用しており、仮出力では低価格の3Dプリンタ「Zortrax」で出力して出来具合をチェックしているようだ。

ゲーム会社時代、趣味で「ZBrush」を始めたというスキマスキ氏

主にキャラクターを3Dプリンタ、羽を手作業で製作したという柳生氏の作品

ここで榊氏は、価格と出力クオリティの兼ね合いでHD3500を利用しているが、仕上がりのよいDWSのもので出力したいと本音をポロリ。また、自分で3Dプリンタを買った場合、運用や出力の失敗、メンテナンス面を考えると出力サービスに頼るしかないことも明かし、現在のところ、どのデジタル造型師も出力面において苦労していることが見て取れた。

トークセッション後の質問コーナーも大盛況

その後、来場者の質問コーナーに突入。「ZBrushを使用しているが、2次元のモニター画面で見るより、3次元に出力すると顔が大きく見えたりパースがおかしくなったりする」という質問に、柳生氏は「モニターと現物とはちがうものだと割り切って、出力後に手で修正しています」と回答。また、スキマスキ氏は「ZBrushは、標準のパースの利き具合が強いので「15」や「20」といった低めの設定で様子を見ています」と具体的なコツも披露した。

その後も、質問が途絶えることがなかったが、あっという間に定刻を過ぎ、惜しまれながらイベントは終了した。