iPhoneとヘッドホンの接続をLightning直結にすることのメリットはいくつかある。iPhoneにおいては、イヤホンジャックがなくなればよりスリムなデザインにできるらしいが、オーディオ的にはデジタル接続になるので、左右のセパレーションが向上して音質が良くなることが期待できる。

LTEやWi-Fiの通信電波においては、高速で演算処理を繰り返しているプロセッサーが生み出す震動など、スマホの中では音に悪影響を及ぼすノイズ源が渦巻いている。スマホの内部でオーディオの信号処理を行うよりも、Lightning経由でピュアな音楽信号を取り出して、外付けのユニットでDA変換やオーディオ信号の増幅を行った方が、PCオーディオ再生でUSB DACを使った方が音にとって有利であるのと同じ理屈で、iPhoneによる音楽再生環境のステップアップが狙えるのだ。

これまでLightning端子を搭載するiOS機器にUSB DACなど外部機器を接続して音楽を楽しむ場合は、非公式ではあるがアップル純正のLightning-USBカメラアダプターを介してUSBケーブルに接続する使い方があった。これがLightning直結のヘッドホンやイヤホンで楽しめるようになれば、より軽いリスニングスタイルでいい音が楽しめる方法として、特にライトな音楽ファン、iPhoneユーザーの間でブレイクする可能性も大きいのではないだろうか。

ただし、Lightning直結によるデメリットも指摘しておく必要がありそうだ。一つ考えられるのは、iPhoneにLightning端子しかなくなってしまうと、スマホをモバイルバッテリーで充電しながら音楽を聴くといった使い方は難しくなる。DACへのバッテリー供給も要るので、音楽再生時にスマホのバッテリー消費が早まることも懸念される。ただ、今回SINEで試してみたところ、70分のCDアルバムをリッピングして、まるまる1枚聴いてみてもiOS機器のバッテリーゲージは10%も減らなかったので、さほど神経質にならなくても良さそうだ。

もう一つのデメリットは、DACやアンプを内蔵するユニットが加わる分、Lightning直結のオーディオ機器は質量は少しだけ重くなりそうだ。もっともCIPHER Lightningケーブルやこれまでに発売されているLightning直結タイプのイヤホン、ヘッドホンを見ても分かるとおり、そのサイズや質量がポータビリティを大幅に損なうものにはならないだろう。CIPHER Lightningケーブルもボタンのクリック感やレスポンスは一般的なヘッドホンのリモコンと何ら変わりはなかった。平型のケーブルが少し固く感じられたが、これが奏功しているのか、絡みにくく取り回しはスムーズだった。

ヘッドバンドも本革製。BMW DesignWorks USAがプロダクトデザインを手がけている

キャリングポーチが付属する