資産売却後のヤフーの行方

ベライゾンとAT&Tを中心としたヤフーの資産買収は、早ければ来月7月にも決着が見込まれる。ただ、現在行われている2回目の資産売却オークションには同2社以外の企業や団体も参加を表明しているといわれ、さらにそれぞれが異なる資産購入を申し出ているという。つまり、資産売却の形態は相手企業によって大きく変化し、その後の新生ヤフーのビジネスも大きく変化することとなる。

前述のように、CEOのメイヤー氏はMavensを戦略の中核と考えている以上、従来ながらのWebポータルや各種サービスはあまり重視していない可能性が高い。これらにはYahoo! NewsやYahoo! Mailなどのサービス、さらにはTumblrやFlickrのような過去の買収資産も含まれる可能性があり、もし同社によってモバイル連動しにくい、あるいは収益率が低いと判断された場合は有力な売却候補となる。広告事業はコアではあるものの、実際にこれを欲しているベライゾンやAT&Tとの交渉でどこまで切り売りされるかは未知数だ。

ただ、現時点で比較的明確なことが1点ある。それはヤフーの大きな資産となっているアリババ株とヤフージャパン株は今回の売却対象には含まれない可能性が高いことだ。

前述のようにアリババ株の譲渡が難しいという理由から、現金化を目的とした売却は当面見送られる可能性が高い。同様に、ヤフージャパン株そのものは今回対象となっている「インターネット事業」のコア資産ではないため、少なくともベライゾンやAT&Tが欲する可能性は低く、唯一の可能性は現金化を目的に一部株式を手放すことがあると考えられることくらいだ。ただ、ヤフージャパンの株式はその3分の1以上をソフトバンクが握っており、仮にヤフーが一部株を手放したとしても現在の経営環境は揺らぐ可能性が低い。

ソフトバンクはどうする?

今回の件を通じてソフトバンクがヤフーの資産買収、あるいは同社が持つヤフージャパン株取得に乗り出すという噂もあったが、少なくともソフトバンクが現時点で大きく動く可能性は低いというのが筆者の予想だ。

ソフトバンク代表取締役社長の孫正義氏。同氏は一連の騒動をどう見ているのか

ソフトバンクはアリババ株の売却のほか、スーパーセルのテンセントへの売却、ガンホーの持ち株比率減少などの施策を立て続けに出し、急速にキャッシュ資産を増やす動きを見せており、これが一連のヤフー騒動への介入資金になるという噂の所以の1つだった。ただアリババ株の売却準備には9カ月の期間を要したと社長の孫正義氏は説明しており、時期的にはオンライン事業の資産売却が取り沙汰された昨年2015年12月よりさらに前のタイミングにあたる。つまり、ソフトバンクの一連の資産売却はヤフーと連動している可能性が低いというのが筆者の予想だ。おそらくは、次の投資事業への種蒔きなど、スプリント買収後の次を見越して流動資産を増やしているのではないかと考える。