はじめまして! 広告写真家の熊谷直夫です。ふだんの仕事はスタジオでの製品撮影やポートレート撮影がメインですが、ライフワークとして年数回、世界各地を旅して風景やスナップをかれこれ30年以上撮り続けています。今回はそんな旅の風景写真を見ながら、写真の構図について解説したいと思います。
知っていると知らないとでは大きな差がつく構図法
みなさんは「構図法」という言葉を聞いたことがありますか。人が見て「美しい」とか「心地よい」とか感じる写真には、被写体の配置や形状に一定の法則があります。例えば、富士山のような三角形は安心感を生み、それをひっくり返した逆三角は不安定な印象を与えます。そうした視覚に対する画面構成の効果をパターン化し、それに当てはめるように被写体を探したり、配置する撮り方を写真の構図法といいます。
三分割構図
中でも有名なのが「三分割構図」。これは、画面を水平と垂直に三分割する線を引き、その線の交点、あるいは線の上にポイントになる被写体を配置した構図のこと。安定感やバランスを与える効果があります。
下の写真は、空と断崖、海辺の3つによって画面を三分割した例です。そのうえで、三分割の交点に人の姿を配置して画面を引き締めています。
日の丸構図
2つ目は「日の丸構図」、つまり主題を画面の真ん中に置いた構図です。実は日の丸構図は、初心者が陥りがちな平凡な構図として揶揄されることもあります。確かにシンプルすぎるため、工夫がないと感じるかもしれません。
でも一方で、日の丸構図は被写体に対する興味や関心がストレートに表現された構図であり、見る人の注意をいっそう引き付ける効果もあります。特に、被写体そのものに力があるときは、凝った構図で撮るよりも、ストレートな日の丸のほうが、印象の強い写真になります。
対角線構図
3つ目は「対角線構図」。これは文字通り、画面の対角線付近にポイントになる被写体を配置した構図のこと。対角線に沿って見る人の視線を誘導し、遠近感や奥行きを表すのに適しています。
直線構図
4つ目は、水平線または垂直線を意識した「直線構図」。水平線構図では左右への広がりや伸びやかさ、安定感を表現でき、垂直線構図では上下への進出や押し出し、高さを強調できます。
三角構図
そして「三角構図」。被写体の作る線がちょうど三角形を描くように画面を構成した構図のことです。山のようにどっしりとした形であり、安心感や安定感を与えます。小物などを画面をバランスよく配置したいときにも有効です。下の写真は、3つの赤による三角構図の例。赤い傘を差した子どもと赤いポストを狙っていたところ、さらに画面上に赤い傘の女性が現れました。
次回は、さらに5パターンの構図を紹介しましょう。