日立アプライアンス(以下、日立)は6月21日、同社の高級炊飯器「ふっくら御膳」の新モデル「RZ-YW3000M」と、高機能オーブンレンジ「ヘルシーシェフ」の新モデル「MRO-SV3000」の試食説明会を開催した。

圧力スチーム炊きができる「ふっくら御膳 RZ-YW3000M」

試食として出されたRZ-YW3000Mのご飯と、過熱水蒸気オーブンレンジで調理したおかず

甘みが増したふっくら御膳

日立の高級炊飯器、ふっくら御膳といえば、圧力をかけたスチームを使った「圧力スチーム炊き」が特徴。蒸気を閉じ込めることで、釜内に圧力をかけて最高105℃の高温で米を炊く炊飯方式だ。最大の特徴が、加圧加熱時に発生した蒸気を内ブタ内部にある空間「給水レス オートスチーマー」に溜める点。ふっくら御膳では、この蒸気を蒸らし工程や保温時に使用する。新モデルのRZ-YW3000Mは、これらの機能を踏襲しつつ、従来よりもさらに「甘み」を引き出す工夫がされている。

炊飯時の蒸気を内ブタについている「給水レス オートスチーマー」に溜める仕組み

RZ-YW3000Mと昨年モデルとの炊飯工程の比較。RZ-YW3000Mは「浸し」時間を長くとっており、さらに高い温度で「蒸し」工程を行う

蒸らし時は内ブタに溜めた水を、7つの蒸気穴からスチームする

以前は米に水を吸わせるため、「炊飯前に米を1時間水に浸す」といった給水作業が必要だった。しかし、最近の高級炊飯器はお米に水を吸わせる「浸水」も炊飯工程に組み込んでいる。ふっくら御膳も、約60℃という高温で米を浸し、短時間で浸水。

さらに、新モデルのRZ-YW3000Mでは、この浸し時間を2分延長した。これにより、米の芯まで水分を吸わせ、加熱した時に、より米のでんぷん質をα化(糖化)させ、甘みを引き出せるわけだ。

米は長時間高い温度で加熱することで、より甘みを引き出すことが可能だ。しかし、加熱工程の後半になると、釜内の水分が減っており、単純に加熱を続けると釜底のご飯が焦げ付いてしまう。そこでRZ-YW3000Mは、炊飯最後の工程である「蒸らし」で従来よりも高い温度の「圧力スチーム」を使用する。釜の上部から圧力をかけたスチームを吹き付けることで、釜底を焦がすことなく、つねに98℃以上の高温をキープ。これにより、よりα化を促進し、甘みが増すという。

好みに合わせてお好みに炊き分け

RZ-YW3000Mは「炊き分け」にもこだわっている。全国の4,000人を対象に「好みのごはんの硬さ」の調査をしたところ、関東の多くが「硬めが好き」と答えたのに対し、関西は「柔らかめが好き」と答える割合が関東よりも多かった(日立調べ)。そこで、浸し時間や蒸らし時間の調整によって、従来と比べて「よりしゃっきり」「よりもちもち」とした炊き分けメニューを用意した。硬めの「極上しゃっきり」は寿司めしやカレー、柔らかめの「極上もちもち」はお弁当などに入れても美味しいそうだ。

日立の調査によると、ご飯の硬さには個人の嗜好のほか、地域差もある

より硬い「極上しゃっきり」(写真左)と、より柔らかい「極上もちもち」(写真右)を試食。同じ水量で炊いたとは思えないほど異なった食感を楽しめた

高い発熱性能、なのに軽い

内釜の高伝熱 打込鉄釜は、なんと重量約720g。水と米が入った状態でも、片手で持てる重さだった

RZ-YW3000Mは内釜に同社独自の「高伝熱 打込鉄釜」を採用している。この内釜、とても軽い。高級炊飯器は1kg超の重い内釜を採用しているものも多いが、打込鉄釜は約720g。このため、洗米時や片付け時も扱いやすい。

この軽さは、内釜の素材に軽いアルミ合金を使用しているためだ。アルミは軽い上に熱伝導性が良く、一気に釜全体を加熱できるという利点がある。ただし、アルミにはIH発熱性能が低いというデメリットも。

そこで「高伝熱 打込鉄釜」は、IHに接する内釜底部に、溶かした鉄を打ち込んで鉄の層を作った。これにより、アルミの軽さと熱伝導性、そしてIHによる高い火力を両立することが可能になった。ちなみに、鉄を打ち込んでいない釜側面と上部にはIHではないヒーターも内蔵している。

鉄を吹き付けて層にしているため、内釜の底にザラザラと凸凹があるのがわかる

本体内部底面にはIH、本体内部側面にはヒーターが内蔵されている

ところで、多くのメーカーが内釜を重くする理由は蓄熱性が高いためだ。重い鋼などの素材は熱をため込む性質があるため、炊飯後半の「蒸らし」工程で高い温度を保ち、α化を手助けするのだ。一方、RZ-YW3000Mは蒸らしや保温時はスチームを使い、さらに外釜には真空断熱材を配置、蓋側にも空気の断熱層を設けることで、蓄熱性を確保。内釜を軽くしつつ、ご飯の美味しさも両立できるという。

熱伝導性の高さや保温性能の高さ、そしてスチームにより、一般的な炊飯器と比較して、加熱時にお米を激しく対流させなくてもムラのない炊飯が可能。このため、1合や2合といった少量でも美味しいご飯を炊ける。

使いやすさを追求した機能

「圧力スチーム炊き」のメリットは、お米を甘くできるだけではない。じつは、炊飯時の蒸気を水にして溜める仕組みのため、なんと炊飯加熱中でも「湯気」が出ないのだ。湯気を気にせず炊飯できるため、引き出し式ではない戸棚の中にも設置でき、置き場所を選ばない。このほか、圧力式炊飯にもかかわらず、炊飯後に洗うパーツが内釜を入れて4点と少ないのも特徴だ。

炊飯加熱中も蒸気を放出しないので、天井がある棚にも設置できる

2014年製モデルよりも使用後のお手入れ点数が減り、洗う手間が少なくなった

解凍性能はさすが! 新オーブンレンジも登場

過熱水蒸気オーブンレンジヘルシーシェフの新モデル、MRO-SV3000

説明会後半には、日立の新しい過熱水蒸気オーブンレンジ「ヘルシーシェフ」の新モデル「MRO-SV3000」も登場した。日立のオーブンレンジといえば、なんといっても「Wスキャン」が特徴。これは、一般的な熱センサーのほかに重量センサーで加熱する食材を計るというもので、温めすぎや温め足りないといった失敗を減らす。

会場では、冷凍マグロの柵を解凍する実験も行ったが、約2分で包丁がサクッと入るちょうど良い温度に解凍されていた。

MRO-SV3000には、400ものオートメニューを搭載。日常で使いやすい和食メニューも124メニュー用意されている。説明会ではMRO-SV3000で作った和食も試食できたが、なんと、カツオと昆布の出汁もMRO-SV3000で引いたものだった。

会場では、冷凍ご飯を解凍する実機のセンシングの様子をリアルタイムにモニターすることができた。あっという間に重さと温度を検知

冷凍マグロも、サクッと包丁で切れる最適の状態まで解凍

最後は試食。RZ-YW3000Mで炊いたご飯と、MRO-SV3000で調理したカボチャと金目鯛の煮つけ、そしてお吸い物。お吸い物はカツオと昆布を使ってMRO-SV3000で出汁を引いている