アップグレードすべきケースとそうでないケース

基本は新OSへと乗り換えることがサポート期間的にもセキュリティ的にも重要だが、何らかの理由で旧環境を維持しなければならないケースがある。古いハードウェアを利用しなければならなかったり、特定の業務アプリケーションが新OSで利用できない場合などだ。推奨はされないが、制御系のシステムなどで更新が難しいケースがあるだろう。その場合はスタンドアロンで運用したり、あるいはネットワークを社内の他のマシンと切り離す形で構築し、インターネットアクセスやUSBメモリなどを介してマルウェアが侵入することのないよう運用ルールを厳格化する。逆に、一般社員が普段の業務で利用するようなアプリケーションは古い環境を維持しようとせず、極力新OSでの動作を想定した形で移行すべきだろう。

デスクトップアプリケーションの場合、Windows 10で動作可能な最新バージョンが提供されている場合はそれに乗り換えを進め、すでにサポートが終了しているようなものは代替製品など別の手段を考える。Webブラウザを使う社内システムの場合は、基本的にInternet Explorer 11(IE11)への移行を念頭に検証を行う。IE11そのものはWindows 7のサポート終了後も、Windows 10の一部としてサポートが継続されることが見込まれており、当面の乗り換え先候補となる。企業ではIE8以前の環境を前提にシステムが構築されているケースもあると思うが、IE11ではグループポリシーの設定によりIE8の動作を再現する「Enterprise Mode」が利用可能になっており、Microsoft EdgeやGoogle Chromeなど他の"モダン"なWebブラウザへの直接移行が難しいケースで有効だ。正直なところ、現時点でEdgeの完成度はまだまだ低いといえるため、IE11の活用が当面の鍵となる。

いずれにせよ、Windows 10を交えたシステム運用のノウハウが提供開始から1年を経て徐々に蓄積されつつあり、おそらく導入に際するデメリットをメリットが上回るケースが増えてきている。情報収集を行いつつ、前述の旧バージョンのサポート期間終了を見据えて、直前になって慌てない移行計画とコストの見積もりをしてほしい。