アマゾン ウェブ サービス ジャパンは6月1日から3日にかけて、クラウドカンファレンス「AWS Summit Tokyo 2016」を開催した。同カンファレンスでは、同社のIoTプラットフォーム「AWS IoT」を活用したさまざまなソリューションが展示されていたので、紹介しよう。

AWS IoTとPepperで実現するバーチャル企業看護師

展示会場でひときわ目を引いたのが、ソフトバンクのロボットを活用したグローバルワイズのソリューションだ。

具体的には、工場で夜勤に従事する人にウェアラブルデバイスを装着してもらい、デバイスが収集した心拍・加速度・位置情報などをAWS Cloudに収集し、そのデータから活動をパラメータ化し、活動量をチェックする。そして、心拍の急激な上昇や下降、加速度を検知したら、その従業員に異変が起きたと見なして、Pepperがその従業員に向けて出動し、内蔵カメラで現場を撮影して、管理者へ報告する。

ウェアラブルデバイスから収集したデータはすべてAWS IoTに送られるわけではなく、グローバルワイズの「Eco Edge Suite」によってフィルタリングされたうえで送られる。

夜間勤務の従業員が装着するウェアラブルデバイス

グローバルワイズの「Eco Edge Suite」

夜間勤務の従業員から収集したデータをモニタリングする画面

緊急時に出動するPepper

工場の夜勤従事者をモニタリングするシステムを実現するアーキテクチャ

このソリューションは愛知県豊田市に本拠を構える小島プレス工業の黒笹技術センターで実証実験が行われているという。グローバルワイズの天野秀樹氏は「Pepperはさまざまなセンサーを搭載することができるので、倒れている人に触れて、その結果をお医者さんに送信する仕組みなどにも取り組んでいきたい」と、今後の展望について話していた。

IoTプラットフォームから収集したデータをERPで活用

アビームコンサルティングが展示していたのが、AWS IoTを活用したIoT PlatformとSAPのERPを連携して、データを活用するシステムだ。同社は顧客のニーズに応える形でこうしたアーキテクチャを構築した。そのため、システムありきではなく、顧客ありきで構築されたシステムとなっているため、実用性が高いという。

会場には、実証実験が進められているという工場を模したデモが行われた。部品を運ぶベルトコンヤーにはセンサーが取り付けられており、そこで収集したデータはIoT Platformに送られ、加工、分析、可視化が行われるとともに、SAP ERPと連携してそのデータが活用される。

ベルトコンベヤー上を移動する部品の状態はセンサーでモニタリングされている

センサーから収集したデータはSAPのシステムに送られる

アビームコンサルティングが製造IoTを実現するアーキテクチャ

安価に導入できるインフラ老朽化監視システム

Acroquest Technologyはインフラ老朽化監視システムを展示していた。会場では、プラレールを用いてデモが行われていた。デモでは、線路のつなぎ目にセンサーが設置されており、そこから収集したデータをもとに温度、振幅、異常検知のモニタリングができる状態になっていた。

プラレールの線路のつなぎ目に設置されたセンサーからデータを収集

各種データの閾値を設定しておけば、異常を検知できる

実際には、これらのデータを活用することで、監視対象の設備の老朽化を予測して、計画的にメンテナンスをするといったことが可能になる。

同社は、リアルタイムでストリームデータ処理を行うサービスをプログラミングレスで構築できるプラットフォーム「Torrentio」を提供しており、これを活用することで、低コストかつスピーディーにIoTを活用したシステムを構築できるという。

先日、IBMのIoTの導入事例を紹介したが、国内でも確実にIoTを活用したシステムの導入が進んでいるようだ。センサーなども安価になっているうえ、クラウド上でデータを収集・分析するプラットフォームの提供も増えており、IoTに取り組む土壌は整いつつあり、今後、さらなる成長が期待できるだろう。