ケイ・オプティコムは、同社のMVNOサービス「mineo」において、通常とは別の専用帯域を設け、快適な通信環境を提供する有線通信オプション「プレミアムコース」のトライアル運用を開始する。400名のモニターから意見を集め、2016年9月に正式サービスとして導入する予定。また通話定額サービスを導入するなど、サービスのさらなる強化も明らかになった。

ケイ・オプティコムは5月31日、都内でmineoに関する発表会を開催した

MVNOが遅くなる理由を回避する

MVNOは上位通信事業者(MNO)の回線を借りて、その中にユーザーを収納して利用させるサービスだ。ただし回線を占有できるわけではないので、MNOやほかのMVNO事業者のユーザーが同時に利用していると、MVNO全体で使える帯域が逼迫し、繋がりにくくなったり、1ユーザーあたりが利用出来る帯域が狭まってしまう。これがお昼時など、利用者が集中する時間帯の通信速度が「遅い」理由だ。

今回のプレゼンテーションを行った同社のモバイル事業戦略グループ・グループマネージャーの津田和佳氏。

今回mineoが開始する「プレミアムコース」は、このような繁忙期であっても一定の速度を保証する帯域を確保し、周囲の通信環境に左右されない様、特定のユーザーが優先的に通信できるようにするサービスだ。渋滞している道路を尻目に、バイパスで上を通り抜けているようなイメージだ。MVNOで現在このようなサービスを行っている例はなく、キャリアの場合も法人などを対象としたサービスではともかく、コンシューマ向けにはこうしたサービスは存在していない。かなり思いきったサービスだと言えるだろう。

プレミアムコースのユーザーは、専用に確保された帯域を使えるため、通信速度やレスポンスが快適になる

プレミアムコースは、まずはトライアルサービスとして、6月1日よりmineoの既存ユーザーから第1回モニターを、7月1日から第2回モニターを募集し、無償提供する。モニターはAプラン(au回線)、Dプラン(ドコモ回線)それぞれ1回につき100名ずつ、合計400名になる予定。その後、モニターからの意見を集約し、9月から正式サービスとして開始する予定だ。

トライアルユーザーの募集はmineoのユーザー参加型コンテンツ「マイネ王」王で行われる

プレミアムコースの料金および、どの程度の帯域を確保するか、技術的にどのようにユーザーを割り振るのか、バランスをどうするかといった細々としたことはこれから決定するとのことで、すべてはモニター向けの試験サービスの動向を見てからということだったが、基本的にはプレミアムコースのユーザーであっても優先枠へは早いもの順、あるいは予約順などが検討されているとのこと。おそらく月額数百円のオプションプランになるのだろうが、筆者は、場合によっては従量制でも面白いのではないかと思った。

安さが身上のMVNOで、有料のプレミアムサービスに対する疑問もありそうだが、「快適さを買う」という発想は、キャリアを含めた他社との差別化という点では十分「アリ」な選択肢だろう。過去に何度も増速を繰り返してきた同社ならではの自信という受け取り方もできる。

音声ユーザーの増加に合わせて音声定額も新設

プレミアムコースの新設に加え、音声通話付きプランデュアルタイプ」のユーザーに対し、電話代が30%安い「通話定額30」「通話定額60」オプションが6月1日から開始された。価格は通話定額30が840円、通話定額60が1,680円。通常30秒10円の通話料がかかる音声通話を、事前に30分または60分ぶんの通話権利を定額で購入できるというもの。

通話アプリを使った割引サービスではなく、純然たる音声通話ということで、実質的に収入減になるということだが、mineoユーザーの約80%が1カ月で通話30分以内、60分以内であれば90%が該当するということで、十分採算はとれると判断しているとのこと。また通話し放題は1通話が5分以内と区切っているキャリアもあるが、時間を気にして使うのは不便ということで、連続通話の時間は設けないという。

メールやSNSでの連絡が主流になってきても、やはり音声通話は電話の基本だ。mineoでも70%近いユーザーがデュアルタイプを選択しているという。mineoをメインの回線として利用しており、毎月ある程度の音声利用が見込まれるmineoユーザーの場合、とりあえず通話定額30にでも入っておけばある程度の節約ができそうだ。

サービス開始2周年を記念して、音声付きプランの「デュアルタイプ」を新規で契約したユーザーには、3カ月間800円ずつの割引が受けられるキャンペーンも実施される

「ユーザー本位のMVNO」で差別化を目指す

mineoはauとドコモ、2つのキャリアを選べるという独自性に加え、全ユーザーで余ったパケットを貯蓄して融通し合う「フリータンク」やユーザーとの交流サービス「マイネ王」を展開するなど、「Fun with Fans」というコンセプトのもと、ユーザーフレンドリーな姿勢を前面に打ち出したMVNOだ。

今後もこの路線は継続するということで、今年7月には同社初のオープンな(一般ユーザーが参加可能な)オフ会を東京と大阪で実施するほか、昨年大阪にオープンして連日盛況な直営のアンテナショップを、2017年初頭には東京・渋谷に開設予定であることが明らかにされた。

これまでは特定のユーザーを対象としたクローズドなオフ会が実施されていたそうだが、今回初めてオープンな内容になるとのこと

大阪のアンテナショップでは毎月1000件以上の契約を処理しているといい、朝から長い列ができる人気を集めているという

また、従来のパソコン工房やグッドウィルらに加え、PC Depotと提携して全国で修理サポートを受けられる体制の強化や、家電量販店を中心とした店頭販売の強化、またフィルタリングサービスや自動バックアップなど、ユーザーの安心・安全をサポートするサービスの強化も予定されているという。MVNOというとサポート体制の不備が不安材料に数えられるが、その点もキャリアに匹敵するレベルまで大きく改善してきているようだ。

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総務省の指導により3大キャリアの動きが制約され、サービスも横並びになりつつあるなか、今年はMVNOが単なる価格競争から一歩進んで、サービス面での差別化を進めてくることが予想される。技術力での勝負から他のサービスと絡めた割引、ポイント制度など、様々な差別化が進むが、「ユーザー本位」という価値観がどれだけ市場に受け入れられるかが注目される。