あまり知られていない都内の世界遺産候補「国立西洋美術館」。フランスの推薦枠で今年世界遺産に登録されようとしている。今までに世界遺産に登録された場所は、その後瞬く間に観光名所になっているが、果たして国立西洋美術館はどうなるか。台東区、そして文化庁の腹案は。

ル・コルビュジエの建築作品についてイコモスが「記載」勧告

ユネスコの諮問機関イコモスは、日本を含む7カ国で世界文化遺産に共同推薦(フランス枠で推薦)している「ル・コルビュジエの建築作品ー近代建築運動への顕著な貢献」について、「記載」が適当との勧告を出した。ル・コルビュジエとは20世紀の世界中の建築物や都市計画に大きな影響を与えた建築家で、「近代建築の巨匠」といわれている。

「サヴォア邸」(提供:文化庁)

1階部分を柱のみ残す形式の「ピロティ」、ガラスの面積を大きくとることができるようにした「横長の窓」、などと現在目にする多くの建築物の「当たり前となっている様式」を創った功績がある。「当たり前すぎて、すごさが分かりにくいですよね。当たり前を作ったのが、ル・コルビュジエのすごいところなのだと思って見てほしい」と台東区の担当者。遺産はフランス、日本、ドイツ、アルゼンチン、ベルギー、インド、スイス、の7カ国にまたがっていて、登録が実現すれば、大陸を横断した初めての世界遺産になる。推薦は7カ国を代表して、最も多い10資産を持つフランスから出されている。日本からは、ル・コルビュジエが国内で唯一設計した国立西洋美術館が資産として入っている。

「国立西洋美術館本館」(提供:国立西洋美術館)

この建物には、「無限成長美術館」の構想が採り入れられている。「無限成長美術館」とは、ピロティから建物の中心に入り、外側に向かって螺旋状に順路をとる。そのため、作品の増加にあわせて展示スペースを延長できるという構想だという。

7月にトルコ・イスタンブールで開催される世界遺産委員会で登録の可否が決まるが、イコモスから「記載」勧告を受けた案件で、登録されなかった例は基本的にはない。登録されれば、日本国内では16件目の世界文化遺産の誕生となる。