女性の平均賃金は昨年過去最高を記録した。社会的に女性の登用が進んでいる結果のひとつだろう。注目したいのは20代後半から30代前半のいわゆる“アラサー”世代。晩婚化が進み、独身で自由に使えるお金が増えたであろうこの世代に向けた市場が注目を集めている。それを象徴しているのが、1990年代に社会現象を巻き起こした「美少女戦士セーラームーン」。20年以上たった今、当時の原画やグッズなどを集めた展覧会が開催され、会期の半分もたたないうちに目標としていた来場者数10万人を達成した。20年以上の歳月を超えて、初めて開催される「美少女戦士セーラームーン展」の何が“乙女心”を惹きつけるのか。
早くも10万人来場
東京港区にある六本木ヒルズで4月16日から開催されている「美少女戦士セーラームーン展」。26日目となる5月11日に来場者数が10万人を突破した。10万人は展示会で1つの目標となる数字だが、期間を半分以上残しての到達したことになる。担当者も、「ゴールデンウィーク後も客足が落ちなかった印象がある」と人気の高さを実感している。
夜にかけて増える女性の来場者
同展の開催時間は午前10時から午後10時。都内の博物館・美術館は午後5時くらいに閉館するところが多いが、それに対し5時間も長い。地上52階から都内を見下ろせる場所にあることもあわせて、セーラームーンを象徴する“月とのコラボ”を実感できる環境だ。この同展の特徴がセーラームーンの世界観だけでなく、ターゲット層にも実にマッチしていること。来場者の傾向について担当者は、「およそ8割が女性で、その中でも20代後半から30代前半が多いという印象」という。そのような人は仕事帰りに来場する傾向が強いのか、平日の午後6時以降に来場者が増えるのがこの展示の特徴だという。
女性の平均賃金は過去最高、最も働いている率が高いのは30歳前世代
ここで“アラサー”世代をめぐる現状を確認したい。内閣府男女共同参画局のHPに掲載されている女性の年齢階級別労働力率いわゆる「M字カーブ」をみると、1975年には、M字の底だった25~29歳の労働力率は次第に上がり、最も新しい2014年では、79.3%と年齢階級別で最も高くなっている。全体的にみても、M字の底は年々浅くなっている。さらに昨年には女性の賃金は過去最高を記録している。
広がるファンの裾野
来場者の傾向について話を戻すと、想定以外のことも起きている。その最たる例が20代男性グループの来場の多さだ。セーラームーン世代よりも若い世代への広がりは、「2年ほど前からアニメ放映が再び始まったことも影響していると思う」(担当者)そうだ。世代性別を超えて支持される普遍的なアイコンになってきているという表れかもしれない。
さらに外国人観光客の存在も忘れてはならない。日本語だけでなく17言語以上に翻訳されているセーラームーン。特にフランスなど欧米からの人気が高いそうだ。そのため普段は中国人観光客が多いところ、この展示に関しては欧米からの観光客が目立つという。さらに同展については海外メディアからの問い合わせが増えているというから、さらに裾野は広がりをみせるだろう。
原画展でなく社会現象を展示している
マンガやアニメをテーマとした展覧会というと、多くは原画やセル画を中心とした展示になっている。そんなイメージを持ってこの展示を見に行くと、その期待をいい意味で裏切る内容になっている。マンガの原画やセル画は展示の目玉ではあるものの、「美少女戦士セーラームーン」とは、どのような社会現象だったのか、ということを振り返り、どう今につながっているのかということが分かるようになっている。