海外スマホに日本のSIMを挿しても使えるように

改正のもう1つの大きなトピックスが、携帯電波の利用に関するものだ。無線LAN・Bluetooth端末に関係した改正とは別の電波法の一部改正も行われ、こちらも5月21日から施行される。

海外から持ち込んだ技適マークのないスマートフォンは、5月21日以前は無線LANとBluetoothは利用できず、海外のSIMを挿して国際ローミングを行う場合に限って、携帯電波を使った通信を行うことはできた。これは電波法第103条の5にもとづいて、総務大臣の許可を受けた通信事業者の包括免許でカバーされていたからだ。

今回、この第103条の5も改正。「第1号包括免許人は、第2章、第3章及び第4章の規定にかかわらず、総務大臣の許可を受けて、本邦内においてその包括免許に係る特定無線局と通信の相手方を同じくし、当該通信の相手方である無線局からの電波を受けることによつて自動的に選択される周波数の電波のみを発射する外国の無線局(当該許可に係る外国の無線局の無線設備を使用して開設する無線局を含む。)を運用することができる。」とあり、丸括弧内の文面が追加されている。

「電波法第103条の5」改正ポイント

この改正のポイントを簡単に言うと、「外国で開設された端末を国内に持ち込み、国内のSIMを使って携帯電波で通信することが可能になる」ということのようだ。

今までは技適マークのないスマートフォンで日本国内のSIMを使い、国内の携帯ネットワークに接続することは違法だった。最近は日本の空港でもプリペイドSIMが販売されているが、訪日外国人がそれを購入して自分のスマートフォンに挿して使う、といった場合、本来技適マークのある端末以外は使えなかったのだ。

ただ、訪日外国人によるデータ通信のニーズは大きく、無線LAN、Bluetoothと同様に規制を緩和した、というのが今回の改正だ。

基準としては、「ITU-R勧告M.1450-5等に定める技術基準に準拠しているもの」であることは変わらない。FCC認証・CEマークなどが当てはまり、これらのマークが確認できる端末であれば、日本のSIMを購入して使うことが違法ではなくなるわけだ。

問題は「第1号包括免許人」が総務大臣の許可を得る必要があるという点。第1号包括免許人であるため、例えばドコモが許可を得たら、同じネットワークを使うMVNOも自動的に許可される。この許可に関して、ドコモとソフトバンクはすでに総務省に申請しており、KDDIも申請に向けて準備を進めているという。これが許可されたあとは、国内のSIMを挿して使うことができるようになる。ただ、事業者が申請して総務大臣が許可を出したかどうか一般には分からないという問題はある。

さて、ここで気になるポイントは、新たに追加された「当該許可に係る外国の無線局の無線設備を使用して開設する無線局を含む」という点だ。総務省の説明では、「海外の通信事業者のSIMを使って海外で利用可能なスマホなどの端末」ということになるようだ。通常、外国人は自国でスマートフォンを購入し、自国の携帯キャリアと契約をしてSIMを挿して利用する。その端末を持ち込んだときに、今回の改正が適用される。

つまり、法律上は「外国人である」ことや「開設された際の契約」は問題にされていない。

今回の改正は「技適マークのない訪日外国人のスマートフォンで、日本のSIMを使う」ことを認めるために行われたものだが、その規定はそのまま日本人にも適用されるため、日本人であろうとも海外で買って開設した技適マークのないスマートフォンを日本のSIMで使うことができる、ということになる。

違法になる場合も

総務省側はこうした使い方に関して「法律上は確かにできるが……」(総合通信基盤局移動通信課)と言葉を濁す。国際ローミングには90日制限の規定もないため、今回の改正でも日本のSIMを90日間以上使い続けることも法律上の規定はない。

無線LAN、Bluetoothは90日間の縛りがあるため、その期間が過ぎれば無線LANもBluetoothも使えないスマートフォンというわけで、利便性が大きく損なわれる。こうした端末を使い続けることは現実的ではないし、誤って無線LANやBluetoothをオンにしてしまった場合、入国後90日を超えていれば明確に違法になるため、利用はお勧めできない。

また、少なくとも海外で利用開始したスマートフォンである点は必要で、海外通販で購入するなどして海外で開設されていない端末には適用されないだろうし、基本的には技適マークが確認できる端末を使うべき、というのは従来通りで変わらない。

あくまで、「海外からの訪日観光客向けの施策である」という点は念頭に置いておくべきだ。とはいえ、少なくとも訪日外国人の利便性が大きく向上するのは間違いがないだろう。